医師転職を考えるにあたり国内医療機関の全体像を今一度整理してみる

2015/09/02

医師転職を考えるにあたり国内医療機関の全体像を今一度整理してみる

今回は医師が転職を考える際に、転職候補先となる医療機関が日本国内にどれくらい存在するのかについて医師転職マーケットの全体像を俯瞰してみようと思う。
クリニックを含めると膨大な数になるので、今回は病院のみに限定して見ていく事とする。

まずは厚生労働省に届け出されている開設者別にみた施設数から。※2013年データより

日本の病院総数は8,540施設(前年度から25施設減少)。
開設者別内訳は下記の通り。

◎医療法人 5,722施設(病院総数の67.0%)
◎公的医療機関 1,242施設(同14.5%)
◎個人 320施設(3.8%)
◎国 273施設(同3.2%)
◎社会保険関係団体 115施設(同1.3%)
◎その他 868施設(10.2%)

この分類は医師の皆さんはどこかで目にした事があるだろうし、感覚的にもまあそんなものだろうと、強いて挙げれば個人が開設者になっている病院がまだ意外と多い(とはいえ年々減少傾向)という感想くらいで、特に違和感も無く受け入れられる内容だと思うが、改めて医師の転職候補先という視点でこれら数字を眺めてみるとまた違った景色が見えてくるかもしれない。

というのも、この分類の中身である。
上記はあくまで施設の数なので、病床数やその病院のプレゼンスというか存在感、そして地域におけるパワー、症例数などはまた別の話しであり、先ずは大きなものから(国→公的医療機関→社保関係医療機関etc.)ひとつひとつ分解して確認してみよう。

(1)国
①厚生労働省: 国立ハンセン病療養所など
②独立行政法人国立病院機構: 国立病院機構◯◯医療センターなど
③国立大学法人: 国立大学付属病院
④独立行政法人労働者健康福祉機構: ◯◯労災病院など
⑤国立高度専門医療研究センター: 国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、国立循環器病研究センターなど
⑥独立行政法人地域医療機能推進機構: JCHO(ジェイコー)病院
⑦防衛省: 自衛隊病院、防衛医科大学校病院
⑧法務省: 医療刑務所
⑨宮内庁: 宮内庁病院
⑩国立印刷局: 国立印刷局東京病院など

(2)公的医療機関
①都道府県: 都道府県立病院
②市町村: 市区町村立病院
③地方独立行政法人: 公立大学付属病院など
④日赤: 赤十字病院
⑤済生会: 済生会病院
⑥厚生連: JA厚生連病院

(3)社会保険関係団体
①全国社会保険協会連合会: 社会保険病院
②厚生年金事業振興団: 厚生年金病院
③健康保険組合及びその連合会: 大阪中央病院、富士重工業健康保険組合太田記念病院、中日病院、東芝林間病院、ブラザー記念病院、松下記念病院、名鉄病院など
④船員保険会: 船員保険病院
⑤共済組合及びその連合会: 国家公務員共済組合連合会(KKR)病院など
⑦国民健康保険団体連合会: 厚生中央病院、国民健康保険◯◯病院など

(4)公益法人
公益法人:公益社団法人、公益財団法人立病院
具体的には、北野病院、倉敷中央病院、健和会大手町病院、榊原記念病院、天理よろづ相談所病院など

(5)医療法人
医療法人:いわゆる民間病院、最も病院数が多い。

(6)私立学校法人
学校法人:私立大学付属病院

(7)社会福祉法人
社会福祉法人:聖隷◯◯病院、江戸川病院、函館中央病院、三井記念病院など

(8)医療生協
医療生協: 医療生協病院

(9)企業
企業: 企業立病院
具体的には、飯塚病院、いすゞ病院、NTT◯◯病院、◯◯逓信病院、大阪鉄道病院、◯◯電力病院、キッコーマン総合病院、JR◯◯病院、東急病院、東芝病院、トヨタ記念病院、名古屋セントラル病院、日立総合病院、ひたちなか総合病院、不二越病院、マツダ病院、三菱◯◯病院など(※企業立病院が経営を企業・健康保険組合から他に移管したり医療法人化するケースもある。)

(10)その他の法人
その他の法人:一般社団法人、一般財団法人、宗教法人立病院など
具体的には、会津中央病院、◯◯医師会病院、◯◯掖済会病院、大阪警察病院、太田西ノ内病院、大原綜合病院、岡山旭東病院、倉敷成人病センター、けいゆう病院、甲南加古川病院、神戸アドベンチスト病院、東京衛生病院、アドベンチストメディカルセンター、神山復生病院、至誠会◯◯病院、十全美容整形、住友病院、製鉄記念◯◯病院、聖隷沼津病院、聖隷富士病院、総合南東北病院、竹田綜合病院、筑波学園病院、東京警察病院、東京武蔵野病院、日鋼記念病院、博慈会記念総合病院、淀川キリスト教病院、立正佼成会附属佼成病院など。
なお、2008年から認定が始まった「社会医療法人」は一般社団法人に分類される為、このカテゴリー(その他の法人)に含まれると思われる。
赤字体質が慢性化している自治体病院に代わって、基準を満たした(有力)民間医療法人に地域医療の主役を担ってもらうべく「公益性」を持たせ救急医療などで貢献してもらう分、税メリットを与えるというのが社会医療法人である。

(11)個人
個人:どこかの医療法人経営者が個人名義で開設しているケースなどがあるが、転職を考える医師の方にとっては、実質的には医療法人◯◯会のグループ病院という捉え方で良いと思う。

以上が開設者別にみた病院の分類である。

病院の持ち場で日々医療を行う医師の皆さんにとっては医療の中身や業務の内容、或いは給与や待遇、やりがい、人間関係が円滑である事などが重要なのであって、病院の開設者が誰であろうと別に関係ないよという声が聞こえてきそうだが、病院といえども経営が成り立たないと廃院になったり、病棟の老朽化が進んでも資金難で新築立替も出来ず、やむなくどこか別の病院と統合して新病院として集約化、効率化を図ったり、買収・営業譲渡などにより経営体制が一新されたりといった事例が最近では珍しくない事から、あながち他人事では無いという点はご理解いただけると思う。

また、医師の皆さんが働きたいと思うような著名な病院や症例が多く集まる病院は、日本全国どこへ行っても概ねどこかの大学の関連病院となっているのが実態である。
つまり、それら有力病院には大学から医局派遣で来ている若手、中堅、ベテランの医師が多数揃っており、外部からの入職はなかなかに難しいという訳である。
どんな仕事でもやりますという先生であれば、転職先の病院はいくらでも存在するだろうが、こだわるポイントが増えれば増える程、希望通りの転職候補先病院はかなり限られてくるという事は頭に置いておく必要があるだろう。

また、次回もこの話題を続け、医師の転職マーケットを俯瞰していきたい。
本サイトの地域別の医師転職市場もご参考にして頂き、転職先候補の医療機関を探す材料にして頂きたい。

転職をご検討中の医師の方は、本サイトの医師登録からご登録下さい。

著者:三木正孝


医師転職コンシェルジュ代表。医師の方が自分らしい働き方、ライフスタイルを過ごす事が出来る様な転職支援を行う医師転職コンシェルジュを運営しております。医療業界や医師転職に関する情報に独自の意見も加えて発信していきます。どうぞよろしくお願いいたします。

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