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2015/05/30
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前回のコラム「医師転職で大失敗!医局を辞める時に気を付けるべき事とは?」では医師が諸般の事情から医局を辞める事を決意した際に気を付けるべき点について考察してみた。今回はその続編として、我々が実際に見聞きした医師転職の失敗事例を通してなぜ転職で失敗する医師がかくも多いのかを見ていき、今後転職を考える医師がキャリア選択に迷った際に少しでも参考になる点があれば幸いである。
まず、医師になりたての若手の先生にとっては初期臨床研修修了後、即ち3年目以降の後期研修をどこで受けるか、ここが先ずキャリア選択における大きな岐路のひとつと言えるのではないだろうか。 大学病院の場合は自分が専門とする科目を決めて(どこの医局に所属するかを決めて)、◯◯学教室の教授をボスとする医局人事の中に組み込まれていく事になる。後期研修修了後は大学病院や関連病院(ジッツ)での勤務、或いは大学院に進み(必要な論文を書くなどして)博士号取得や人によっては海外留学などと並行しながら臨床経験を積んでいくというのが一般的な臨床医としてのキャリアプランとなるようである。
他方、市中病院での後期研修を選択する研修医(シニアレジデント)も近年増加している。 このケースはいわば初めから医局に属さない生き方を選んだ医師という事になるだろう。 当然の事ながら医局人事とは無縁となり、後期研修を受けた市中病院に就職する形になるので、ずっとその病院で勤務を続け昇進(診療科の部長→センター長→副院長→院長etc.)を目指すのか、或いは症例や別の何かを求めて、他の病院へと転職するのか、或いは開業するのか、兎も角、自分で自分の勤務病院を探す必要があり、以降のキャリア構築は基本的には自分でマネージする事になるだろう。
どちらが良いとは一概には言えないが、現時点での私の個人的意見を述べさせていただくと、ひと通りの臨床経験を積んで(どこへ行っても通用するスキルを蓄積して)、ある程度診療に自信を持てるようになるまでは大学医局に属する方に利があるように感じている。 医師の財産とも言える貴重な同門の仲間や人脈を得られるチャンスが多い事、症例、設備、スタッフが充実している関連病院を数多く持っている事など、大学医局に身を置くキャリアプランには相応のメリットがあるように思う(逆に何かを我慢しなければならないトレードオフとなるデメリットもあるのだろうが・・・)。
しかし、医局で長年頑張ってきた医師の中にも医局人事での不遇や不満、或いは諸般の事情から医局を辞めて市中病院に転職する医師は多い。 それもいきなり医局を飛び出し、自分の理想を市中病院(主に民間病院、オーナー病院等)に求めるケースが多いのであるが、それまで医局人事の異動で勤務してきた病院(主に公立・公的病院などの地域基幹病院)とのギャップに戸惑うケースが少なくない。 そもそも大学医局が医師を派遣するような基幹病院は極論すれば損益度外視の医療(DPC導入などで最近はそうでもないが)を行う事ができる(ある種、恵まれた)環境である場合が多い。 一方、市中一般病院は収益を挙げなければ病院自体が存続できない宿命にあるとも言え、必然的に医師に対する成果要求度も高くなる傾向がある(或いはオーナーが金儲け主義のところも実在する)。成果を上げる医師には年収もある意味青天井という病院もある。
例えが適切かどうか判らないが、大学医局所属医師は“大手有名企業のエリートサラリーマン”と似ているように思う。誰もが知っている有名病院に勤務して(プライドを満たしてくれ)、安定した身分による安心感と恵まれた福利厚生、それにまずまずの給料が保証されている。しかし転勤・異動の辞令には逆らえない。
一方、医局に属さない医師は“ベンチャー企業に身を投じ一旗あげようというチャレンジャー”に重なって見える。実力があれば自ら道を切り開いていけるが安定とは程遠い(働きが悪ければ身分の保証は無い)。自分のやりたいように、生きたいように病院を選ぶ事ができるし、うまく行けばその病院が大きく成長し、そこでの出世とそれに見合う大きな収入が得られるかもしれない。転勤や異動を命令される事もあまり無いが誰もが知っている有名病院という訳にはいかないケースが多い。
どちらの生き方も長い医師人生を自分が納得感を持って過ごせるならば個々の価値観の問題であり、どっちが良いというものでもない。 しかし、医師転職の失敗事例の多くは、事実、本人が失敗したと感じてしまっており、言葉の端々に自信の無さが現れ、病院選びにも悪影響を及ぼしてしまっている。自分が納得できない転職は失敗である。 「拙速な常勤転職」による「理想と現実のギャップ」から短期間での離職、転職を繰り返す事によって“履歴書が汚れてしまう”事は大きなデメリットであり失敗事例に多く見られる傾向である。
気を悪くした先生には申し訳ないが、これは医師の採用担当者や病院経営者が常勤医師の中途採用を検討する際に最も警戒するポイント(マイナスポイント)であり、その医師がいくら実力と人格を兼ね備えた素晴らしい先生であっても書類選考段階を突破できず面接に至らないケースが少なくないのである。悲しいかな、これが現実なのである。ゆえに、この様な失敗は出来るだけ避けなければならない。 しかし適材適所という言葉もあるように、人にはそれぞれ必ず長所(勿論短所も)があり、そこを活かすべく医師の代弁者として病院と折衝・調整を図るのが我々の強みでもあるので悩んでいる先生は一度気軽にご相談をいただければと思う。
病院の中身は医師募集概要や数値データを基にいくら外から眺めてみても、実際に働いてみないと分からない事が多いものである。 この事も失敗事例が後を絶たない理由の一つであろう。 可能であれば・・・、「失敗した」と思っても1年から2年、その病院で踏み止まって(我慢して)勤務を続ける事もご検討をいただきたい。1年から2年は勤務をして次の病院へと移る場合はあまり履歴書上で問題となる事はないように思う。
色々な失敗事例を見聞きして思うのは、常勤転職を考える医師には、候補先の病院に先ずは定期非常勤などのアルバイトで入り込み、一定期間働いてみる事をオススメしたい、という事である。
その期間に“見極める”のである。自分が転職してモチベーション高く、長く働く事ができる病院かどうか、職場環境や一緒に働く医師やコメディカルスタッフも含めて観察するのである。その段階を経てから、常勤で入職したならばその病院に対して大きなギャップや失望を感じる事は少ないであろうし、これにより失敗事例をかなり少なくするが出来るのではないだろうか。
裏を返せば、より良い転職(転職成功)には拙速を避け(失敗事例を検証し)、一定期間(定期非常勤アルバイトなどで)の見極めを経て、じっくりと慎重を期して取り組む事が、遠回りに見えても結局は成功への近道なのかもしれない。 その間も今の常勤勤務を続ける事は決して時間の無駄では無いと思う。勤続期間が長い事、それ自体が履歴書の評価アップにも繋がるからである。転職の失敗はのちの転職にも影響してくることであるので、気を付けて行うに越したことはない。
医師転職において失敗しない為にも当サイトの常勤医師求人のページに常勤勤務の転職時に気をつけるポイントを記載しているのでこちらのページも是非参考にして頂きたい。
著者:三木正孝
医師転職コンシェルジュ代表。医師の方が自分らしい働き方、ライフスタイルを過ごす事が出来る様な転職支援を行う医師転職コンシェルジュを運営しております。医療業界や医師転職に関する情報に独自の意見も加えて発信していきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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