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2022/08/30
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勤務医は大きく二つに分類される。
ひとつは、大学医局所属の医師。
もうひとつは、大学医局に所属せず医療機関と直接雇用契約を結ぶ勤務医。
ここでは医局所属の医師、いわゆる医局員の人事異動・転勤について見ていきたい。
現状、医局所属の医師に転勤(人事異動)はつきものだ。
医局とは、大学医学部(医科大学)の診療科目ごとの組織で、教授を筆頭に、准教授、講師、助教、医局員、大学院生などの医師で構成されている。
医局には人事異動があり、医局員は基本的に転勤の辞令を断ることは難しいのが実情となっている。
医師の「転勤」とは、一般的には大学病院や関連病院への人事異動のことを指し、医局員にとって生活面、金銭面で大きな変化を及ぼす可能性がある重大関心事なのである。
大きく以下の2つの理由が考えられる。
医局の関連病院とは、大学医局が医局員(医師)を派遣している病院のことで、「ジッツ」とも呼ばれている。
関連病院は、大学病院の近郊都市部のみならず、かなり遠隔地にある場合もあり、医師確保が困難なへき地や地方の病院へ医局員を安定的に派遣することにより医局が地域医療やへき地医療を支えている実情がある。多くの医師は都市部の職場を希望するため、希望者が少ない病院へは医局が人事権を行使して医師を派遣し、診療体制の維持を図りポストの空きを埋めるために定期的な人事異動が必要となる訳だ。
また、医局人事には、医師の教育という側面もあるようだ。
病院によって医療機能や集まる症例が異なり、一つの病院に何年も勤務していると、症例や経験にどうしても偏りが生じてしまい、思考が硬直化、そして医師としても人間としても視野が狭まることになりかねないため、複数の病院を経験することは将来の選択肢を拡げることに繋がる面があるだろう。
医局の人事異動では事前に医局員に希望調査が行われることが多いようだ。
ある日突然、何の前触れも無く、へき地の関連病院への転勤を命じられることは少ないと思われるが、それでも、医局と関連病院の事情によっては、自宅から遠く通勤困難な病院への転勤が決まったり、不本意な人事異動を命じられた医局員は、とても困った事態に直面することになるのだ。
家族持ちの医師の場合は特に悩ましく、家族(夫、妻)の仕事の都合や子供の学校(教育)の関係から一家揃っての引っ越しが困難なことも珍しくない。
そのような(不本意な)転勤を、医局人事で命じられた場合の医局員の選択肢は、残念ながら下記のような限られたものになってしまうだろう。
医局員にとっては、まさに人生の岐路、「運命の分かれ道」といえる局面かもしれない。
一度決まった人事はよほどのことが無い限り拒否できないので、覚悟を持って退局する医師は、病院の医師求人を探して自ら応募するか、医師専門の転職エージェントに登録して医師求人案件を紹介してもらうことになるだろう。
医局員の人事異動はいつ頃決まる?
次年度の人事が決まる時期は医局によって様々なようだが、概ね、半年前~遅くとも3カ月前くらいまでには決まることが多いと聞く。しかし、諸事情により直前に言い渡されることもあるようだ。
新年度4月の異動であれば、秋頃から年末年始くらいにかけて言い渡されるのが一般的だろうか。
(中には、7月末~8月頃に教授面談という医局員もいた。4月より早い時期の異動だった可能性もあるが。)
医局員の転勤頻度と年齢の傾向、単身赴任は?
30代半ばくらいまでの医局員は人事異動(転勤)が多く、希望も通りにくいと言われている。転勤の頻度は数年に1回が一般的だが、短い場合は半年~1年ということもある模様。
結婚や出産、育児などライフイベントと重なることが多い年齢であり、「なぜこのタイミングなの?」、「仕事、患者の引継ぎはどうすれば?」と悩む医師は多い。
医局での下積み時期(教育期間)、丁稚奉公的な面もあるかもしれないが、様々な病院や症例を経験できる貴重な時期であり、また、見知らぬ土地で暮らし働く経験も将来の糧となり、転勤のプラス面を「楽しみ」と捉えられれば、若手医局員にはデメリットばかりとも言えないだろう。
医局人事の地方勤務(遠方の関連病院勤務)は、医師の転職市場においてはマイナスポイントと判断されることは無いので、その点は安心してほしい。
異動の頻度は減少。
勤務先がほぼ固定される(何も無ければその病院で定年まで勤め上げる)。
この頃には、居住地や家族事情なども考慮されるようになり、異動の頻度は更に減少。
しかし、医局や関連病院の状況や事情によっては、50代や定年間際でも人事異動が全くない訳ではなく、転居や単身赴任を選択する医師もいる。
医局員の人事異動、転勤はどのように決まるのか?
トップである教授と医局長など限られた数人が人事権を持っていることが多い模様。
教授選の動向により教授が変わると医局員の大移動という事例も珍しくない。
医局員の個人的な希望は通るのか?
医局の都合が優先で、個人の事情や希望は二の次というのが一般的だろう。
これは医局の組織運営としては当然そうだろうなという感じではある。
医局人事で出世したい、可能な限り希望を叶えていきたい医師は、医局の上層部とうまく付き合っていくことが求められるだろう。
但し、自分が望む働き方によっては、医局上層部との距離感の取り方も変わってくるかもしれない。
教授をはじめとした医局上層部との関係が悪ければ、希望は通らないだろうし、希望しないへき地へ飛ばされるかもしれない。気に入られれば、ある程度は医師個人の希望も聞いてもらえるかもしれないし、教授が手元に置いておこうと重要ポジションや大学病院勤務が続くかもしれない。
しかし、「そろそろ大学病院を離れたい」タイミングが訪れ、医局員に人気の市中病院を職場として希望する場合はどうだろうか。
仕事量が適正で、給料が高く、それでいて医師数や医師の力量、医療設備も大学病院に負けず劣らず充実した人気の市中病院に出たい場合は、医局上層部との絶妙な距離感が求められるかもしれない。
(教授に気に入られ過ぎて、ずっと大学病院から出してもらえないなんてことも・・・)
医局人事次第では退局して転職することを考えているので、その際は転職サポートをお願いしますという相談を医局所属の医師から受けることがあり、今回のコラムで医局の人事異動に関するテーマを取り上げてみた訳だが、
どこの組織も結局は人間関係、好き嫌い、本音と建前が交錯する世界で、
それは医局においても例外ではないということを筆者としては再認識した次第。
さて、各地の医局員のみなさんの実情はいかがだろうか。
著者:三木正孝
医師転職コンシェルジュ代表。医師の方が自分らしい働き方、ライフスタイルを過ごす事が出来る様な転職支援を行う医師転職コンシェルジュを運営しております。医療業界や医師転職に関する情報に独自の意見も加えて発信していきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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