医師の平均給与・平均年収 あなたの給与・年収は働きに見合う妥当なものか関心ありませんか?

あなたの働き、やりがいに応じた
医師として適正な給与・年収・評価を得られていますか?


医師の年収は高いのか、安いのか?医師の平均年収や手取りは?

           

医師の年収や手取り、給料明細は実際のところ、実態の把握がなかなか難しい。
それは医師の給与や年収は働く病院によって大きく異なり、診療科や役職によっても多少異なり、更に常勤医としての年収(基本給)だけでなく、役職手当や当直、時間外手当、更には外勤(非常勤アルバイト)の回数や単価(日給、時給など)によって医師の年収には大きな差がつくからである。
そういう訳で、よくある「医師の平均年収」(令和元年=2019年の医師の平均年収は1,169万円、病院勤務医の平均年収は1,491万円、病院長の平均年収は2,675万円 ※第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告)というものは全ての年齢層の医師(や病院勤務医)をひっくるめた「平均」の数字から算出された年収であって、他の職業と比較する際のひとつの目安にはなっても、個々人の医師にとってはあまり意味のない数字と言えるかもしれない。しかしながら医師の平均年収の全体像を把握しながら自分自身の現在の年収と照らし合わせてみるという感じで下記の表に示した年齢別のデータも参考に今の給与があなたの働きや能力に見合う適正なものかどうかを考える際の参考にしてもらいたい。

医師の年収

医師にとっては自分の懐具合を探られるのはあまり気分の良いものではないだろうし、大きなお世話でもある。医師に限らず年収情報というものはセンシティブな個人情報の中でも人に知られたくない情報の最たるものに挙げられるかもしれない。
とは言え、転職を意識する医師にとっては自分の年収が世間相場と比べて高いのか低いのか(多いのか少ないのか)、自分の年収が果たして働きに見合う妥当なものであるのか否かは関心のあるところであろう。出来れば自分の能力に見合った年収をもらいたいと思うのは当然のことであるし、年収が医師としての勤務先からの評価を表す一面もあるというのもまた事実であろう。

医師の平均年収(勤務医)
年齢別(30代、40代、50代、60代、70代)

そこで、統計上の医師の年収を年齢別に俯瞰してみたい。
我が国では統計データが比較的整備されており(どれほど実態を正確に反映しているか疑問も残るが)、ある程度の参考にはなると思われるので見ていこう。

総務省統計局の「平成27年賃金構造基本統計調査」の中に医師(勤務医)の平均年収データがある。これは日本の労働者の給与実態を調べる統計調査で、「賃金センサス」と呼ばれるものであるが、厚生労働省が毎年実施しているものである。
これによると、平成27年(2015年)の医師全体(勤務医)の平均年収は下記の通りとなっている。

●医師全体(勤務医)の2015年平均年収(RAY Cruise Inc.作成)

医師の平均年収 1,098万円
医師の平均月収 85万円
医師の平均時給 4,991円/時間
医師の年間賞与額等 80万円
医師の平均年齢 40.0歳
平均勤続年数 5.1年
労働者数(勤務医数) 95,220人
総労働時間 170時間/月
(159時間+超過労働11時間)
男性医師の平均年収 1,180万円
女性医師の平均年収 870万円
男性割合 73.8%
女性割合 26.2%

続いて、医師(常務医)の年齢層別(30代、40代、50代、60代、70代)平均年収、
性別(男性医師、女性医師)による平均年収の統計は下記の通りとなっている。

●医師全体(勤務医)の年齢層別・性別 平均年収

年齢層 医師の平均年収(男性) 医師の平均年収(女性)
30~34歳 683万円 693万円
35~39歳 914万円 780万円
40~44歳 1,228万円 976万円
45~49歳 1,397万円 1,338万円
50~54歳 1,652万円 1,324万円
55~59歳 1,769万円 1,273万円
60~64歳 2,090万円 1,562万円
65~69歳 1,677万円 1,356万円
70歳~ 1,450万円 667万円

大学病院や基幹病院と市中病院、クリニック勤務医などの年収の実態は?

医師(病院勤務医)の平均年収

●施設規模別・医師の年齢別、性別平均年収
(医師/企業規模・従業員数1,000人以上)=大学病院や基幹病院などの大病院と考えられる。

年齢層 医師の平均年収(男性) 医師の平均年収(女性)
30~34歳 584万円 567万円
35~39歳 786万円 642万円
40~44歳 974万円 844万円
45~49歳 1,204万円 938万円
50~54歳 1,346万円 1,404万円
55~59歳 1,505万円 842万円
60~64歳 1,768万円 800万円
65~69歳 1,853万円 N/A
70歳~ 1,058万円 N/A

(医師/企業規模・従業員数100~999人)=市中病院などの中小規模の病院と考えられる。

年齢層 医師の平均年収(男性) 医師の平均年収(女性)
30~34歳 1,126万円 1,004万円
35~39歳 1,331万円 1,032万円
40~44歳 1,457万円 1,131万円
45~49歳 1,593万円 1,330万円
50~54歳 1,827万円 1,289万円
55~59歳 1,831万円 1,320万円
60~64歳 2,149万円 1,666万円
65~69歳 1,605万円 1,356万円
70歳~ 1,344万円 667万円

(医師/企業規模・従業員数10~99人)=クリニック等と考えられる。

年齢層 医師の平均年収(男性) 医師の平均年収(女性)
30~34歳 1,416万円 766万円
35~39歳 1,287万円 870万円
40~44歳 1,730万円 1,180万円
45~49歳 1,850万円 1,815万円
50~54歳 1,676万円 1,343万円
55~59歳 2,141万円 1,354万円
60~64歳 2,099万円 1,466万円
65~69歳 1,719万円 N/A
70歳~ 2,101万円 N/A

「賃金センサス」は調査対象が従業員10人以上の事業所(病院、クリニック、老健施設など)の常用労働者に限定されている為、医師(勤務医)の労働者数は95,220人となっている(これは独立開業している医師は調査対象に含まれない為である)。医師の平均年収(全年齢)が約1,098万円というのは一見低いように思えるが、これは独立開業している医師の報酬などが含まれていない事が影響していると考えられる。
また、医師の年間賞与支給月数(年間賞与その他特別給与額÷所定内給与額)が他の職種と比較すると小さくなっているが、これは年俸制の給与体系を採用しているケースが多い事も一因として考えられる。

母数が少なく極端な数値が出ている箇所も見られるが大方の傾向は読み取る事ができる。
即ち、一般企業では大企業ほど年収が高くなるのが一般的であるが、医師の世界ではよく言われるように施設規模に反比例する(クリニック>市中病院>基幹病院・大学病院)傾向がこの統計にも如実に表れている。
権威のある有名施設よりも市中病院の方が年収は高く、更にクリニック(特に美容系などの自由診療分野)が年収の面では更にその上を行くといった感じである。

実際の医師の年収は常勤先での給与の他、アルバイトをたくさん掛け持ちしている場合などは相当額がプラスされる為、実際にはもっと高年収を得ている医師は多いと思われる。
例えば1回5万円の当直アルバイトを週1回入れ、年間52回勤務する場合は、260万円が年収に上積みされる計算になる。常勤医としての年収にこの金額が加算される。
業務内容や時間帯によっては医師の時給相場は1万円~1.3万円の非常勤アルバイトが珍しくない為(夜間当直帯の時給相場はこれよりも低い)、体力のある医師ならば非常勤アルバイトでも相当の年収上積みが可能である。医師不足の折、常勤医師の負担軽減の意味合いもあり、非常勤アルバイト医師の活躍の場は多く、病院にとっては常勤医の負担軽減の面からも欠く事のできない貴重な戦力(労働力)となっており、患者や地域医療に貢献していると言える。年収を増やしたい医師にとって勤務医以外の仕事(外勤アルバイト)を増やす方法は常勤先での業務時間を増やすよりも効率が高くなるケースが多い。

民間病院の医師平均年収

調査実人員 調査人員(復元後) 平均年齢 平均年収
病院長 70人 591人 61.6歳 2,085万円
副院長 221人 1,892人 57.7歳 1,821万円
医科長 673人 7,856人 51.4歳 1,515万円
医師 1,324人 20,170人 42.3歳 1,168万円
月額額面(A) うち時間外手当(B) (A)-(B) うち通勤手当
病院長 174万円 5.7万円 168万円 2.1万円
副院長 152万円 7.6万円 144万円 1.4万円
医科長 126万円 12.5万円 114万円 2.5万円
医師 97万円 11.4万円 86万円 1.9万円

Source: 人事院 職種別従業員数、平均年齢及び平均支給額資料2015を基にRAY Cruise Inc.が作成


病院長(病院)の平均年収

大学病院の医師平均年収

調査実人員 調査人員(復元後) 平均年齢 平均年収
大学学長 21人 126人 66.3歳 1,251万円
大学副学長 103人 539人 60.5歳 1,073万円
大学学部長 199人 996人 59.7歳 987万円
大学教授 2,540人 32,856人 56.5歳 900万円
大学准教授 1,980人 18,355人 46.9歳 720万円
大学講師 1,245人 10,489人 44.8歳 630万円
大学助教 872人 11,518人 38.2歳 532万円
月額額面(A) うち時間外手当(B) (A)-(B) うち通勤手当
大学学長 104万円 0.5万円 103.7万円 1.4万円
大学副学長 89万円 0.1万円 89.3万円 6.2万円
大学学部長 82万円 0.1万円 82.1万円 3.9万円
大学教授 75万円 0.4万円 74.6万円 4.6万円
大学准教授 60万円 0.5万円 59.5万円 4.4万円
大学講師 53万円 0.7万円 51.8万円 3.5万円
大学助教 44万円 2.2万円 42.1万円 2.7万円

Source: 人事院 職種別従業員数、平均年齢及び平均支給額資料2015を基にRAY Cruise Inc.が作成


国立病院機構(国立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
病院医師 7,141人 1,358万円

Source: 総務省:独立行政法人及び特殊法人等の役職員の給与等の水準(平成26年度)を基にRAY Cruise Inc.が作成

地方公共団体の全体平均(公立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 11,315人 1,330万円

都道府県の全体平均(都道府県立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 3,033人 1,135万円

市区町村組合の全体平均(市立病院などの公立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 8,282人 1,401万円

指定都市の全体平均(指定都市・公立病院の医師平均年収)
札幌市,仙台市,さいたま市,千葉市,横浜市,川崎市,相模原市,新潟市,静岡市,浜松市,
名古屋市,京都市,大阪市,堺市,神戸市,岡山市,広島市,北九州市,福岡市,熊本市

対象人員数 平均年収
医師職 691人 1,319万円

市立病院の全体平均(市立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 4,830人 1,377万円

町村立病院の全体平均(町村立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 905人 1,597万円

特別区の全体平均(東京23区の公立病院の医師平均年収)

対象人員数 平均年収
医師職 93人 1,008万円

Source: 総務省:地方公務員給与の実態(平成26年)を基にRAY Cruise Inc.が作成

民間病院と大学病院 勤務医の平均年収を比較

大学医局に籍を置き、医局人事で大学病院や関連病院に勤務する医師の平均年収と、医局を出て民間病院に勤務する医師の平均年収を統計データを基に考察してみよう。
上記の表は総務省統計局や人事院が公表しているデータを基に医師転職コンシェルジュ(RAY Cruise Inc.)がまとめたものであるが、 統計を公表している官庁がばらばらである為、出来るだけ前提条件を揃えるよう配慮したが、 細かい点は抜きにしてざっくりとした傾向を掴む程度の目的で医師の方々が自分のキャリアプランや転職、医師としての進路を考える際にご参考いただきたい。

上記の平均年収はいずれも当直など時間外手当をはじめとした各種手当を含んだ額面(税引前)の年収を示している。
これによると、やはり医師の平均年収が高いのは、民間病院に勤務する医師であり、 病院長で2,085万円、副院長で1,821万円、医科長(診療部長クラスだろうか)で1,515万円、その他医師で1,168万円程度となっている。

一方、大学病院に勤務する医師の場合は、 教授で900万円、准教授で720万円、講師で630万円、助教で532万円程度となっている。 最先端の医療や研究の環境が整っており、医師人脈の構築や社会的尊敬、名誉といった経済的ベネフィット以外のメリットが大きいのが大学病院(医局)の特長だろう。

経済的(金銭的)側面のみにフォーカスすると、医師のキャリアにおいて各々ゴールとも言える民間病院の病院長と医学部教授の年収格差は1,100万円ほどにもなる。 (あくまで給与のみの比較で、その他のフリンジベネフィットや講演料などその他の収入はここでは考慮に入れていない。)

若手医師の年収比較でも、民間病院1,168万円に対して、大学病院の助教クラスは532万円なので、その差は636万円。年収格差は大きい。 医師はその気になれば外勤アルバイトでも高額の収入を稼ぐ事ができるので、常勤先からの年収が全てではないが、バイトを増やせば、その分、自分の時間を拘束されるのは言うまでも無い。

国立病院機構や公立病院に勤務する医師の年収も上表の通りで、都市部の立派な大病院ほど、年収には抑制圧力が掛かる傾向が見て取れる。 名誉と報酬(年収)が逆相関になるという、ある意味歪な構造となっている。著名な大病院には多くの医師が集まる為、需給バランスで医師の年収も決定されるという面があるのだろう。

医師の年収格差について考察

医師の年収傾向

研究や最先端医療、更には海外臨床・研究留学のチャンスに恵まれる事もあり、優秀な医師人脈が築きやすい点が大きなメリットと言える大学病院(医局)勤務。 有力な大学医局は多くの関連病院を持っており、医局員は自分で就職先を探す必要が無い(就職先に困る事が無い)。 そして関連病院の多くは医療機器や医師、医療スタッフが充実している有力公立・公的病院・有力民間病院であり、勤務先としては申し分の無い施設が多い。 その一方、自分で勤務先病院を選べないというのが悩ましいところで、僻地の関連病院勤務を命じられたり、忙しさの割に年収が低いと感じるなど不満を抱く医師も多いようだ。

また、最近は医学博士号を取得しない若手医師が増えているように感じる。
博士号を取るために大学院に通いながら大学病院で働くと、その間はどうしても金銭面での苦労を余儀なくされる訳で、 名よりも実を取る医師が増えているというのも時代の流れであり、今の日本の経済情勢を敏感に感じ取っての行動なのだろう。 博士号を取るよりも、医師としてのスキルに自信が持てるようになったら医局を出て、 高い年収と相応のポストやポジションで迎えてくれる病院へ転じていく医師が昔と比べて増えている事は事実だろう。

家族構成や生活レベルによって一概には言えないが、常勤先(主たる勤務先)の年収にアルバイト先からの給与を加えた総年収で1,600万円以上くらいになると、 年収に関しては概ね不満は無いという医師が多いように感じるというのが、我々医師転職コンシェルジュの印象である。
しかし、生活レベルや家族構成によっては、もっと多額の年収を稼ぐ必要がある医師も少なくない。
例えば子息の学費(私立中高一貫校、医学部進学など)や住宅ローンなどを抱える医師も多く、 そういった場合で、常勤先(主たる勤務先)の年収が2,000万円~、それにアルバイトからの収入をプラスして年収総額2,500万円~3,000万円以上を稼ぐ医師もいる事だろう。 どういうキャリアプランを選ぼうとも、多くの人々に直接・間接を問わず貢献するような良い医師には経済的にもある程度は成功してもらいたいものだ。

都道府県別平均年収・勤続年数ランキング

平均年収・平均勤続年数を様々なランキング別に見てみよう。

平均年収が高い都道府県TOP5

都道府県 平均年収 平均年齢 平均勤続年数
1.岩手県 1,851万円 56.1歳 9.9年
2.鹿児島県 1,750万円 50.5歳 8.2年
3.長野県 1,636万円 42.0歳 7年
4.高知県 1,617万円 48.9歳 5.5年
5.福島県 1,608万円 49.9歳 6.4年

男性医師の平均年収が高い都道府県TOP5

都道府県 平均年収 平均年齢 平均勤続年数
1.岩手県 1,851万円 56.1歳 9.9年
2.鹿児島県 1,818万円 52歳 8.3年
3.長野県 1,782万円 42.7歳 6.8年
4.福島県 1,724万円 49.8歳 4.9年
5.徳島県 1,719万円 49.3歳 9.5年

女性医師の平均年収が高い都道府県TOP5

都道府県 平均年収 平均年齢 平均勤続年数
1.秋田県 1,681万円 38.5歳 9.5年
2.高知県 1,474万円 40歳 8.9年
3.宮崎県 1,446万円 42.4歳 2.8年
4.福井県 1,432万円 53.1歳 14.9年
5.山梨県 1,365万円 39.8歳 4.4年

平均勤続年数が長い都道府県TOP5

都道府県 平均勤続年数 平均年齢 平均年収
1.福井県 11年 47.3歳 1,573万円
2.岩手県 9.9年 56.1歳 1,851万円
3.香川県 9.3年 43.3歳 1,383万円
4.沖縄県 8.5年 45.5歳 1,170万円
5.神奈川県 8.4年 42歳 1,165万円

男性医師の平均勤続年数が長い都道府県TOP5

都道府県 平均勤続年数 平均年齢 平均年収
1.沖縄県 10.5年 49.5歳 1,238万円
2.岩手県 9.9年 56.1歳 1,851万円
3.鳥取県 9.8年 50.9歳 1,121万円
4.徳島県 9.5年 49.3歳 1,719万円
5.神奈川県 9.4年 42.8歳 1,250万円

女性医師の平均勤続年数が長い都道府県TOP5

都道府県 平均勤続年数 平均年齢 平均年収
1.福井県 14.9年 53.1歳 1,432万円
2.福島県 14年 50.2歳 1,018万円
3.山口県 10.4年 45歳 1,334万円
4.秋田県 9.5年 38.5歳 1,681万円
5.宮城県 9.4年 40歳 1,050万円

男性医師が若くして稼げる都道府県TOP3

都道府県 平均年収 平均年齢 平均勤続年数
1.長野県 1,782万円 42.7歳 6.8年
2.佐賀県 1,672万円 42.4歳 5.5年
3.宮城県 1,641万円 41.1歳 6.5年

女性医師が若くして稼げる都道府県TOP3

都道府県 平均年収 平均年齢 平均勤続年数
1.秋田県 1,681万円 38.5歳 9.5年
2.高知県 1,474万円 40歳 8.9年
3.宮崎県 1,446万円 42.4歳 2.8年

医師の退職金事情について

医師の転職サポートをしていて最近感じる事がある。それは、「定年」と「退職金」をあらかじめ確認する医師が以前よりも増えているという事である。

転職活動中の医師で年齢が30~40代半ばくらいまではそれほどでもないが、45歳以上くらいの医師になると、医局を辞めて医師転職エージェントに登録するなどして自分で転職先を探して市中病院(民間病院、公的病院など)へ転職する際に、以前は20年も先の(遠い将来の)定年や退職金を気にする医師はそれほど多くはなかった。しかし、最近は少し様相が変わってきており、
何歳まで雇ってもらえるのか(雇用の安定)?
定年後に再雇用・雇用延長してもらえるのか(定年の延長)?
そして、退職金は貰えるのか(退職金規程があるのか)?
いったい退職金の金額はどのくらいなのか?

といった具合に、かなり細かく定年や退職金についての確認をする医師が増加しているのだ。

これは、かれこれ30年に渡り日本経済がほとんどゼロ成長で、賃金が増えない我が国(日本)において国民の多くが感じている将来不安に対する自己防衛反応と考えられ、世間一般からは高所得と見られている医師とてもはや安泰ではないと医師自らが敏感に感じ取っているという事なのかもしれない。

さて、前置きはこのくらいにして、本題に入ろう。

医師の退職金制度・退職金規定について

あなたの病院の退職金制度は?
常勤医として何年勤務したら退職金がもらえる?

まず、現実問題として「退職金制度が無い病院」も少なくないという現実をご存知だろうか。

そして、これから一つの病院で長く勤務しようと考えているなら、「退職金規程の有無」についても一応確認はしておいた方が良いだろう(但し、転職時の採用面接においては、お金の話しや細かい条件ばかりを確認する医師は敬遠されるので、まずは業務の話しを優先に展開した方が良いだろう)。

退職金(退職手当)は、常勤医師が退職した際に、支給され(死亡による退職の場合は、その遺族に支給される)、その支給対象は、公立病院などでは勤続1年以上で支給される場合があるが、民間病院などで一般的なのは勤続3年以上の常勤医師である。

「勤務医の退職金」はどのくらい?

「退職金制度がある病院」に勤務する常勤医の退職金の額についてだが、勤務医の退職金は意外と多くはないというのが率直な印象だ。

退職金は病院によってそれぞれ退職金規程などに計算式があり一律ではないのだが、
退職金の額=退職時の「基本給(月給)」x退職金係数(病院により異なる)
というように病院によってそれぞれ計算式が決まっている。

イメージしやすい例としては下記のようなものがある。(下記計算式は実在の医療法人の退職金規程から抜粋)。

(退職時における基本給)×(1/2)×勤続年数

例えば、退職時の月給(のうち基本給)が100万円の医師が勤続10年で退職する場合、退職金の額は、100万円x1/2x10年=500万円という具合に計算できる。勤続20年の医師だと同様に計算して退職金は1,000万円という具合だ。

なお、計算基礎が「基本給」である点には留意してもらいたい。月給に占める〇〇手当の割合が多くて基本給が低く抑えられている場合は、退職金の額も少なくなってしまうのだ。

では次に医師(勤務医)の退職金を勤務形態別に見てみよう。

① 大学病院に長く勤務する医師の退職金

大学(国立大学法人、学校法人など)から退職金、共済年金が支給される。給与水準は大手企業の会社員と比較して高いとは言えないものの、退職金や共済年金は整備されており勤続年数が長くなれば勤続年数の長い会社員と同等くらいの退職金にはなるようだ。

② 大学医局に属して関連病院への異動を数年ごとに繰り返す医師の退職金

大学の医局員として医局人事で関連病院に勤務する医師の退職金はどうだろうか。医局人事で市中病院を数年ごとに転々とする場合、退職金規程でカウントされる勤続年数はその都度リセットされてしまう。その為、退職金の額は微々たるものというのが実態のようだ。
(事実、退職金などそもそも当てにしていない医師が多いように見受ける。)

③ 医局を辞めて市中病院に転職する医師の退職金

市中病院の中でも民間病院の年俸は公的な病院よりも高い傾向にある。退職金の支給対象は常勤医師として勤続3年以上~というのが一般的。年俸が高いとはいえ、まとまった金額の退職金を手にする為には、「勤続年数が長い事」が必要条件となる。勤続年数が短いと退職金の金額は大きくはならない。

「開業医の退職金」は?

では、開業医の退職金事情はどうなっているのだろうか。開業医の場合は(医療法人、個人クリニックなど組織形態を問わず)、退職金制度を自分で作らなければ、引退時に退職金を受け取る事はできない。

開業医が取るべき対策としては、自分の引退(老後)に向けて退職金規程を整備する、小規模企業共済などに加入して毎月掛け金を積立てる、或いは、自分で老後の必要資金から逆算して資産形成を計画的に行うなどして、引退後や老後へ備える事が必要だろう。

医師の退職金は結局いくらぐらい?

興味のある医師は自分の勤務先の就業規則や退職金規程を一度確認して退職金がどのくらいの金額になるのか計算していただくとして、医師の退職金の一般的な目安としては(病院によって規定が異なる為、ざっくりとした一般論になるが)、常勤医師として同一病院に10年間勤務したとしても退職金は200万円から500万円といった水準だろうか。

公立病院の年収は民間病院よりも低い傾向にあるが、退職金の支給水準は逆に公立病院の方が民間病院よりも高い傾向にあるようだ。

ざっくりとした退職金の相場は、勤続年数が長い医師の場合(20年以上~など)、およそ1,000~2,000万円程度と言われている。高所得と言われる医師だが、退職金は意外に少ないなと感じる人が多いのではないだろうか。

医師の退職金が大きな金額になりにくい理由

ではなぜ、高所得と言われる医師なのに、退職金は思ったほど多くないのだろうか。医師の退職金が大きな金額になりにくいのには理由がある。それは、ひとつの病院での勤続年数が短くなりがちな「医師のキャリア形成」独特の勤務形態によるものだ。

一般の企業では大学を出て(22歳くらいで)新卒入社して、定年(65歳)まで勤務すると勤続年数は40年以上にもなり、勤続年数が25年を超えるあたりから退職金の額は大きな上昇カーブを描く傾向にある。

それに対して、医師の場合は、20代、30代は医局人事で数年ごとに大学病院から関連病院へ異動を繰り返す事が一般的で、40代になってようやく相応のポジションを得て一つの病院に落ち着くという事が多い。医局に属さず自分で就職先を探す医師も30年、40年とずっと一つの病院で常勤医として勤め上げる人生を送るという人は稀だろう。医局人事での異動であれ、転職であれ、勤務先病院が変われば、勤続年数はその都度リセットされてしまうのだ。必然的に勤続年数は短くなってしまい、退職金も増えないという宿命に多くの勤務医は置かれてしまっている。

一般企業における退職金は、企業が社員の為に老後資金を長年にわたって積立運用してくれているという一面と、「退職金は給与の後払い」的な側面もある訳だが、医師の退職金はあまり多くを期待できない分、医師の立場から考えると、毎年の給与(年俸や年収)を可能な限りたくさん貰って、天引き後の給与(高い所得税と社会保険料を引かれた後の手取額)の中から計画的に且つ堅実に資産を形成していく事が肝要となるだろう。

実情として、医師の採用面接の場では、病院側も医師側も退職金については殆ど話題に上らない。それよりも採用時の年俸、そして「次年度以降」の契約更新、昇給の有無が双方にとって、より重要な確認事項であり交渉ポイントなのである。

医師の場合は、上で見てきた通り、諸般の事情により退職金にはあまり多くを期待できない分、世間一般よりも高い年収を得る事は、ある意味当然の権利とも言えるだろう。 会社員の退職金が「給与の後払い」的側面を持つのに対して、医師の場合は、退職金も現在価値で割り引いて毎月の月給に含めて先取しているという見方ができなくもない。
世の中に楽な仕事は無いが、高所得=高負担の医師はやはり大変だなあと感じる事も多く、医師免許取得の難易度や医師の仕事の責任の重さを考慮すると、医師にはお金の心配など無しに目の前の仕事(患者さんや治療)に専念できる環境で働いて欲しいし、その環境整備を医療機関側には求めていきたい。

さて、医師の退職金事情について見てきたが、如何だっただろうか。医師は高年収・高所得と言われている割には、退職金は意外と少ないと感じた人が多いのではないだろうか。

規程の退職金では定年後(老後)が心配で、再雇用や定年延長してもらって元気な間は医師として働き続けるか、或いは、どこかの時点で開業するか(開業はリスクとリターンが表裏一体)、はたまた、引退後を見据えて若い時から資産運用や投資に精を出すか、医師ひとりひとりの価値観、考え方は多様化しており、昔と比べると医師という職業の安定性が揺らいでいると感じている医師が増えているようにも思う。

退職金にも税金が掛かる

最後に、蛇足になるが、退職金にも「税金」が掛かる事は認識しておこう。退職金は、勤務先に所定の手続をしておけば、源泉徴収で課税関係が完了するので、原則として確定申告の必要は無い。

退職金は、通常、その支払を受ける時に「所得税」及び「復興特別所得税」、「住民税」が源泉徴収(又は特別徴収)される。退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものである事などから、退職所得控除や、他の所得と分離して課税されるなど、税負担が軽くなるよう配慮がされてはいるが、将来的には税制が変更される可能性があるので、最新の税制については税理士や税務署などに確認した方が良いだろう。

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