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JALと日本医師会との提携について思うこと

JALと日本医師会との提携について思うこと

「お客さまの中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
航空機内で急病人が出た際にキャビンアテンダントが乗客に対して現在行っている呼び掛け(ドクターコール)である。私はこれまでそういった場面に居合わせた経験は無いが、TVドラマや映画などで誰もが一度や二度は見た事がある光景となっている。これがなくなるかもしれないという事で多くの医師の方々も注目したニュースだと思う。

JAL DOCTOR登録制度について医師からの評判は?

今回の取り組みの中身はこうだ。日本医師会が発行する医師のICカード情報をJALへの登録(私は医師です、急病人発生の時にはお手伝いしますという意思表示)を希望(というより志願?)する医師はJAL(日本航空)のホームページから事前登録をする事で、急病人発生という不測の事態にキャビンアテンダントがその医師の座席を予め把握できている為、直接その医師に協力を求める事ができるというものである。
航空機の乗客の中に医師がいるか否かを事前に把握できる為、これまでのようなドクターコールが不要になるかもしれないという触れ込みで、この「JAL DOCTOR登録制度」を2月15日から運用開始する事になったようだ。
しかし、肝腎の医師からの評判は芳しくない。

診療に従事する医師には応召義務(医師法第19条 第1項)があるとはいえ(応召義務の是非についてはここでは触れない)、専門分野や力量を無視して全ての「医師」を一括りにしている点や日本における法制度の不備(災難に遭ったり急病になったりした人など窮地の人を救うために「無償で」「善意の行動」をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができる事をしたのなら、たとえ力及ばずともその結果につき責任を問われないという趣旨の法、これが日本では整備されていない、或いはグレーゾーンとなっている。)などから不安感を抱いた医師たちが多いであろう事は容易に想像できる。

医師であれば全くの素人よりはマシなのは確かだろうが、一般人が医師に過剰に期待し、過度な負担を強いるのは医師の疲弊や逃散を招きかねない。
必要な環境が整備される事無く、義務と結果責任だけを押し付けられるとしたら、みんなそんなところからは逃げ出すか近寄らなくなってしまうのは自明の理である。

医師の使命感と善意のみに依存する制度には少々無理があり、今回のJALの施策は問題提起や理想論としては有りだろうが実効性の面からは残念ながら片手落ちの印象を受ける。

JAL DOCTOR登録制度について医師からの声を集めてみた

以下、不安を感じる医師の声を集めてみた。

・医師といっても全知全能ではなく専門外の対応は困難な事を理解して欲しい。
・善意で最大限の協力をしても結果が悪ければ責任問題や訴訟に発展するリスクがある。
・限られた医療キットしかなく、検査もできない飛行機の中では医師も殆ど何もできないのが現実。過度な期待をされても困る。
・看護師や救急救命士の資格を持ったCAを養成する方がより実効性があるのでは?
・善意や使命感で助けようとしても救命出来なかった場合、訴えられるかもしれない。
・ER担当医であれば、ある程度対応できるかもしれないが、例えば皮膚科や眼科の医師にAMIや脳梗塞などの処置を求めるのは無理があり、酷な話しだ。
・法整備(善きサマリア人の法)が無ければ、現実的な運用は困難。最近も救助ヘリからの転落事故に対する訴訟があったばかり。
・勿論出来る事は全力で協力するが、既往歴が不明な急病人や専門外のケースなど期待に沿えない事もある。
・登録する医師にメリットが見当たらない。プライベートや休暇、或いは学会の移動中など勤務時間外くらいはゆっくり過ごしたいというのが本音。その場に居合わせれば出来る事は勿論協力するが飛行機の中でもオンコール待機状態の緊張感を強いられるのは正直辛い。
・そもそも医師会に入っていない医師が多い。

それに対して日本医師会の考えはどうなのだろうか。JALとの今回の取り組みが最初の一歩で、今後ANAや他の航空会社へと同様の取り組みを拡大していくのだろうか。
もし、JALとだけという事であれば、JALを利用する医師は恐らく減るだろう。
今後はJALへの搭乗を避けて、新幹線での移動に切り替えたり、どうしても飛行機に乗らなければならない場合はANAを選択するという医師が増えるだろう。
良い悪いという話しではなく、個人の選択の問題なので、第三者がとやかく言うべきものでもないだろう。

自分が出来る事は使命感や善意から出来る限り協力しましょうという医師は多いと思うが、医師も普通の人間である限り、誰しも自信が無い事や専門外で対応困難という事は当然ある訳で、医師免許を持っているというだけで、突然過酷な(不慣れな)緊急を要する現場に放り込まれ、重過ぎる責任を背負わされるリスクは避けたいというのはある意味で当然の心理と言える。

航空機内の突発的な急病人にオールマイティに対応できる医師のみ登録してくれれば良いという主旨であれば、それはそれで一歩前進といえるだろうが、闇雲に医師のみに重い責任を背負わせるようなものにならなければ良いのだがと感じたニュースである。

今回と対照的なDoctor on boardプログラム

今回のJALとは対照的に、ルフトハンザドイツ航空は同様の制度に対して協力してくれる医師へのインセンティブを設けているようだ。
「Doctor on board」プログラムというのがそれで、以下にLufthansaのHPから該当箇所を引用させていただく。

機内で医療援助が必要となった場合、「Doctor on board」プログラムにご登録の医師の方に援助をお願い致します。ご登録いただいた皆様にはルフトハンザより謝礼を進呈いたします。

・Miles & Moreの5,000アワードマイル
・「Handbook of Aviation Medicine: and In-Flight Medical Emergencies(航空医学・機内医療援助ハンドブック)」1冊
・プログラム参加者用にデザインされた特製バッゲージタグ「Doctor on board」
・次回のフライト予約でご利用いただける50ユーロ分のプロモーションコードを1回分、および定期的なキャンペーン
・ルフトハンザにてDeutsche Akademie Fur Flugmedizin(航空医学ドイツアカデミー)との提携による、ルフトハンザ医療サービスが提供するセミナー(有料)への参加。その際にはCMEポイントも取得できます。

ご登録時にMiles & Moreに医療専門分野の情報が登録されますので、緊急医療が必要な事態が発生した場合、客室乗務員が医師の方に援助をお願い致します。機内に医師の方が複数いらっしゃる場合には、様々な専門分野の協議が可能です。

【賠償責任と保険】
医療援助を行った医師の方は法的に保護されます。ルフトハンザドイツ航空がそのような事態に備え契約している責任保険の範囲で治療を受けた搭乗客からの賠償請求に対しては填補されますので、医師のお客様ご自身が責任を問われることはありません。ただし、故意による過失は除外されます。この免責は医師の方ならびに医療関係の援助者の方にも適用されます。

ルフトハンザの「Doctor on board」であれば登録する医師はかなり多いと思う。
人間心理をよく理解した仕組みで(センスというか、これが至極当然だろう)、これなら医師も安心して登録ができ、緊急の際には出来る限りの処置を行ってくれる事だろう。
医師たちも納得の上、使命感と善意を以って援助協力が出来るフェアな制度のような気がする。
日本のナショナルフラッグキャリア(今はJALなのだろうかANAなのだろうか?)も頑張ってもらいたいものだ。

さて、今日は医師転職とはあまり関係のない(しかし医師には重大な関心事と思われる)テーマを見てきましたが、
「医師転職コンシェルジュ」では、医師の皆様とできるだけフランクにお付き合いをさせていただき、人としての信頼関係をベースとした転職のお手伝いやキャリアを中心とした悩みの解決を微力ながらサポートさせていただく事を心掛けています。
転職やアルバイトをお考えの医師の方々は、些細なお問い合わせやご相談も大歓迎です。
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新型のがん治療装置を東芝と放医研(放射線医学総合研究所)が共同開発

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TOSHIBAというロゴはCTやMRI、超音波装置など医療用画像診断装置で医師の方々には馴染みが深いブランドであるが、その東芝(東芝本社)は現在、不正会計問題に端を発し経営再建の只中にあり、組織の合理化が待った無しの状況に置かれている。

そんな中、東芝は成長分野であり虎の子とも言える医療機器分野(ヘルスケア事業)の子会社株式(東芝メディカルシステムズ)の50%超を売却する方針を固めた。
これにより東芝メディカルシステムズは東芝の子会社ではなくなる訳であるが、この優良事業の獲得を巡っては数千億円規模で日立やソニー、富士フィルムホールディングスなどが買収を検討していると報じられている。

ちなみに東芝の医療用画像診断装置事業は世界第4位の事業規模であり、医療用画像診断装置の分野で似通った事業構成を持つ日立が仮に東芝メディカルシステムズを買収したとすると、その事業シェアはCTで世界1位、超音波でも世界第2位の規模となる。
富士フィルムの場合は、医療分野では既に超音波の分野に参入(2011年に携帯型超音波診断装置の大手企業、米国SonoSite.Inc.を買収)しており、更なる医療事業の強化を図っていると言われている。
また、ソニーは自社の強みであるイメージセンサーをCTやMRIに搭載する事が可能となり、更に東芝が持つ顧客基盤(病院や医師)に直接リーチ出来るといった各社それぞれの狙い(シナジー効果)が今回の買収を通して見え隠れする。

一方、より大掛かりな装置を必要とする医療分野(重粒子線の技術など)は引き続き東芝本体に残して事業を継続するという方針らしい。

重粒子線を活用した新型のがん治療装置を共同開発が発表された

東芝本体と放医研は放射線の一種である重粒子線を活用した新型のがん治療装置を共同開発し、「世界の研究者から殆どできないだろうと言われていた技術」をこのほど確立したと発表した。

重粒子線はがん細胞を壊す力が強く、狙った患部に集中して照射する事でがん細胞をピンポイントで壊す事ができ、患者の身体への負担も少ないと言われている。
しかし、従来の重粒子線治療装置は搭載する電磁石が大きく、ガントリー全体が大型化(炭素線は陽子線の約3倍曲がりにくいとの事)してしまう為、全長25m、回転部の重量は600トンにも及ぶ大型の装置が必要で、これまでは普及が困難であった。
これを東芝が持つ原子力事業の技術を応用し、今回、小型化に成功したという事らしい。

いずれにしても、CTやレントゲンなど放射線画像診断装置の他、MRIなどは検査機器として医師の方々には大変馴染み深く、今や診断において不可欠なものである。
これら医療機器の充実度合いは医師が転職を考えるにあたり、医療施設(病院やクリニック)を選ぶ際に重要なチェックポイントの一つとなっている項目である。

以前(2007年~2011年)には内視鏡分野で圧倒的No.1(現在も)であったオリンパスが巨額粉飾事件で世間を騒がせた。消化器内科や消化器外科の医師の方々には記憶に新しい事だろう。

大手企業といえども経営の舵取りを誤り、軌道修正をせずにそのままズルズル進んでしまうと、それが表面化した時には一気に経営危機に陥ったり、優良事業の売却を余儀なくされたりといった事態に追い込まれるのである。病院経営においてもそれは同様であろう。
やはり組織は人なりで、病院の場合は医師ひとりで(良くも悪くも)大きく変容する可能性(や危険性)があるという事を時折、実例で目にする事がある。

今日取り上げた東芝のケースでは、CTやMRIのブランド名がTOSHIBAでなくなり、医師の元へ訪れる営業担当者の名刺も違う社名に変わっているかもしれない。

REGZAブランドで知られる東芝の液晶テレビは気の利いた機能を備えた玄人好みの良い製品が多く、個人的には好きなブランドである。
家電事業は既にコモディティ化しており製品の価格下落が激しく、なかなか儲からない事業分野になってしまっているが、東芝のものづくりには良いイメージを持っているので、医療分野では是非、患者や医療現場の医師の方々、技師の方々など関係する人々から愛される東芝の復活を応援したい。

以上、本日のコラムではあまり医師転職や医師求人募集とは関連の無い話題を取り上げましたが、我々「医師転職コンシェルジュ」には、今春入職していただける先生を求めてまだまだ医師求人ニーズが旺盛な医療機関様からの医師募集案件が多数寄せられています。
今春、或いは今秋、1年後など時期は未定でも転職や帰郷、Uターン転職などをお考えの医師の方々は、些細なお問い合わせやご相談も大歓迎です。
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今更ですが・・・、国民医療費40兆円突破から見えてくるものとは?

今更ですが・・・、国民医療費40兆円突破から見えてくるものとは?

国民医療費40兆円突破。
このニュースは昨年10月に各種メディアで大々的に報じられたので目にした医師の方々も多いと思うが、この40兆円という数字、これは2013年度の数字が集計を経て2015年10月に発表されたものである。
以前は4月や8月、9月に公表されていた年もあるのだが、国全体の膨大な数字を取りまとめる為、こういった類の統計数字が公表されるのには随分と時間を要すという事なのだろう。
今は2016年1月なので少々今更感もあるものの、今日はこの話題から見えてくるものを取り上げたい。

40兆円という「大台を超えてしまった」という事でとりわけ大きなニュースとなった訳だが、35兆円突破で同様に大きなニュースとなったのが、その僅か4年前の2009年度の事である。平成に入ってからの国民医療費の推移を下記の表にまとめたのだが、ものすごい伸びである。言うまでも無いが、これは医療行政における財政状況が悪化の一途を辿っている事を意味している。ご参考までGDP(国内総生産)の推移も列挙しておく。

●GDP(国内総生産)の推移

年度 国民医療費 GDP 主な政権(総理大臣)
1989年(平成元年) 19.7兆円 416兆円 宇野宗佑、海部俊樹
1990年(平成2年) 20.6兆円 452兆円 海部俊樹
1991年(平成3年) 21.8兆円 474兆円 海部俊樹
1992年(平成4年) 23.5兆円 483兆円 宮澤喜一
1993年(平成5年) 24.4兆円 483兆円 宮澤喜一、細川護熙
1994年(平成6年) 25.8兆円 496兆円 細川護熙、羽田孜、村山富市
1995年(平成7年) 27.0兆円 505兆円 村山富市
1996年(平成8年) 28.5兆円 516兆円 橋本龍太郎
1997年(平成9年) 28.9兆円 521兆円 橋本龍太郎
1998年(平成10年) 29.6兆円 511兆円 橋本龍太郎、小渕恵三
1999年(平成11年) 30.7兆円 507兆円 小渕恵三
2000年(平成12年) 30.1兆円 511兆円 小渕恵三、森喜朗
2001年(平成13年) 31.1兆円 502兆円 森喜朗、小泉純一郎
2002年(平成14年) 31.0兆円 498兆円 小泉純一郎
2003年(平成15年) 31.5兆円 502兆円 小泉純一郎
2004年(平成16年) 32.1兆円 503兆円 小泉純一郎
2005年(平成17年) 33.1兆円 505兆円 小泉純一郎
2006年(平成18年) 33.1兆円 509兆円 小泉純一郎、安倍晋三
2007年(平成19年) 34.1兆円 513兆円 安倍晋三、福田康夫
2008年(平成20年) 34.8兆円 490兆円 福田康夫、麻生太郎
2009年(平成21年) 36.0兆円 474兆円 麻生太郎、鳩山由紀夫
2010年(平成22年) 37.4兆円 480兆円 鳩山由紀夫、菅直人
2011年(平成23年) 38.6兆円 474兆円 野田佳彦、安倍晋三
2012年(平成24年) 39.2兆円 474兆円 野田佳彦、安倍晋三
2013年(平成9年) 40.1兆円 483兆円 安倍晋三

(Source: 政府統計を基にRAY Cruise Inc.が作成

増え続ける国民医療費

国民医療費40兆円突破から更に3年目に入った2016年現在、この数字は更に膨張を続けている事だろう。その原因は超高齢化に因るところが大きい訳だが、ここでは深くは掘り下げない。
私が社会人になった1992(平成4)年の国民医療費は23.5兆円、今は40兆円を超えているので、その頃の2倍を超えるのも時間の問題だろう。そのくらい凄い勢いで膨張しているのである。
このコラムを見ていただいている医師の方々も各々、医師免許を取得した年の国民医療費と見比べてみられると、夫々思うところがあるのではないだろうか?

対して、GDPを見てみると日本経済がシュリンク、或いは縮小均衡していっている様子が見て取れる。2013年のGDPが483兆円。これを2020年に600兆円に拡大しようというのが今の安倍政権の大きな政策目標のひとつであるが、これについてもここでは深くは触れない。

日々臨床や研究など医療の現場で多忙な多くの医師の方々にとって、あまり現場の肌感覚からかけ離れた大きな数字を並べられても、それは政治家や厚労省の官僚が考えるべき仕事だろうという事になると思うが、ちょっとコーヒーブレイクの合間にでもご覧頂き、今の日本が、或いは日本の医療費と国力の関係がどうなっているのかを趨勢的に感じ取っておく事は、医師自身の今後のキャリアプランや家族との暮らし、ひいては病院が医師に配分できる人件費(医師の給料、年俸)などにも間接的に影響を及ぼす事から、把握しておいて損という事は無いだろう。

まあ、私がぐだぐだと述べるまでも無く、「数字は雄弁に物語る」である。
もっと様々な数字を(例えば、高齢化率、国の借金の推移だとか、医師数の推移なんかも・・・)併記して眺めてみると色々な事が見えてきて面白いのだが、複雑になりすぎてピントがぼやけてしまい誰も見てくれそうにないので今日は上表の項目のみに留めておいた。
いずれにしても国民医療費などの社会保障関連費の膨張により、その財源確保の為に消費税が8%から更に10%へとアップする事が既定路線となっているのは周知の通りである。

最後に本日のテーマである「国民医療費」の概念を確認しておこう。
(以下、厚労省HPより抜粋)

「国民医療費」は、当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計したものである。
 この費用には、医科診療や歯科診療にかかる診療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費等が含まれる。
 なお、保険診療の対象とならない評価療養(先進医療(高度医療を含む)等)、選定療養(入院時室料差額分、歯科差額分等)及び不妊治療における生殖補助医療などに要した費用は含まない。
 また、傷病の治療費に限っているため、(1)正常な妊娠・分娩に要する費用、(2)健康の維持・増進を目的とした健康診断・予防接種等に要する費用、(3)固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用も含まない。

という訳で、今日は国民医療費の推移について見てきましたが、
我々「医師転職コンシェルジュ」には、今春入職していただける先生を求めてまだまだ医師求人ニーズが旺盛な医療機関様からの医師募集案件が多数寄せられています。
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病理診断医(病理医)の医師転職マーケット事情

病理診断医(病理医)の医師転職マーケット事情

今日はクリスマスである。FMから流れてくるクリスマスソングとDJの軽妙なトークを聴きながらこのコラムを書いている。
医師の方や入院中の患者さんもそれぞれの12月25日を過ごされている事だろう。
日本は宗教や様々な価値観に寛容で、それぞれの良い点をいいとこ取りして自分たちの色に染めるような柔軟性があるように思う。

Doctor of Doctorsと呼ばれる病理医

さて、今日は病理診断を話題として取り上げたい。
言うまでもなく病理診断は現在の医療に欠かす事ができない分野である。
病理医は、全ての臓器、全ての患者を対象に様々な疾患の確定診断を担う“Doctor of Doctors”とも呼ばれる医師である。
患者さんに直接会う機会は少ないものの、臨床医からの診断依頼に応え、様々な疾患の確定診断から正確で最適な治療方針決定へと導く事を使命とする医師である。

病理医である田村浩一先生の著書「図解入門 よくわかる病理学の基本としくみ」に下記のようなアメリカンジョークの記載がある。
(内科医の先生方、外科医の先生方、アメリカンジョークとの事なので、くれぐれも気を悪くなさらないで。)

内科医は何でも知っているが何もしない。
外科医は何も知らないが、何でもやる。
病理医は何でも知っていて何でもやるが、たいていは手遅れである。

病理医といえば病理解剖という一般的イメージからのブラックユーモアで、アメリカにおいては日本よりも病理医の数が多く、一般の人々にも仕事内容がある程度イメージできるほど身近な存在という事らしい。

日本においては、「病理診断科」や「病理外来」を標榜できるようになって久しいが、それでも常勤の病理医を擁して病理診断科を標榜している医療機関は病床数300床以上の施設が殆どのようで、規模の小さい病院では病理検査室が無いところが多く、非常勤の病理医がいる場合もあるが、多くは検体検査を外注しているのが実態である。
そして、日本の病理診断の65%以上は病理診断の検査センター(衛生検査所)などに持ち込まれて行われているようである。
病理の標本は、ホルマリンで固定され脱水、脱脂の後、パラフィン(蝋=ろう)に埋め込み、薄切り、染色という過程を経る為、どうしても丸一日程度は時間を要す。
検体を病院まで回収に行き、検査センターで標本を作成、その標本を病理医に送って診断を委託し、上がってきたレポートを依頼元の病院に届けるという流れだと、病理結果の診断に数日掛かってしまうというのが病理診断の現状のようである。

検査センターも様々であるが、病理専門医の常勤医師は1~2名、それに非常勤で仕事を依頼する(登録)病理医が20~30名といった施設が多いのではないだろうか。

病理診断の種類と病理医のキャリアについて

病理診断には以下の様なものがある。

・ 細胞診断
・ 生検組織診断
・ 手術で摘出された臓器・組織の診断
・ 手術中の迅速診断
・ 病理解剖

「病理専門医」資格を取得した後の病理医の主なキャリア(進路)は以下の様なものが一般的だろうか。

・大学の病理学教室
・大学病院病理診断科
・一般病院(だいたい300床規模以上)病理診断科
・病理診断の検査センター
・病理診断専門のクリニック(開業)
・米国など海外での病理医としてのキャリア

日本病理学会認定の病理専門医は2,200名程度と絶対数が少なく、全国的に病理医不足の傾向が強い。
病理診断は患者の状態に左右される事が少ない事から、子育てや家庭との両立が比較的しやすい科目とも言われており(病理解剖で夜間、休日に呼ばれる事もあるが、最近では病理解剖も日中に行う病院が増えている)、女性病理医の割合が高い事も特徴であり、20~30代の病理医の半数近くは女性病理医が占めている。
病理科の転職市場と求められる医師像についてはコチラ

病理診断医(病理医)の医師求人募集情報をお探しの医師の方へ

医師転職コンシェルジュには常勤・非常勤の病理医を求める医師求人募集案件が寄せられ、一方で転職を考える病理専門医の医師からもご相談をいただいており、よい橋渡しができるようにと心掛けて常々仕事をさせていただいている。
病理診断医に対する医師求人募集案件の一例としては、
国立病院機構の病院や社会医療法人、大手医療法人グループの中核病院など規模の大きい病院からの病理専門医を募集する医師求人案件が中心となるが、病院以外の検査センターが病理診断医を求める医師求人案件など、医師ひとりひとりに合わせたオーダーメイド仕様で医師の転職(常勤)、非常勤アルバイト探しをサポート致しますので医師求人案件をお探しの医師の方はどうぞ気軽にご連絡をください。お待ちしております。

という訳でタイミング良く、Chris ReaのDriving Home for ChristmasがFMから流れてきたので、今日はそろそろこの辺りで切り上げてまっすぐ家に帰ろう。

それでは皆さん、楽しいクリスマスをお過ごしください。

医師転職を考えるにあたり病院グループの売上順位からそのプレゼンスを見てみる(その2)

医師転職を考えるにあたり病院グループの売上順位からそのプレゼンスを見てみる(その2)

今回も前回に引き続き医師が転職候補先病院を見る場合に着目すべき点のひとつとして、医療法人の売上高に注目してみたい。前回は売上高の大きい順に上位50グループの病院グループについて見てきたので、今回は51位以降の病院グループについて見ていきたい。

前回も書いたが、昨今、病院の倒産やM&Aも珍しくなく、転職候補先病院の経営母体(病院グループ)の売上高、利益率などから中身をよく探っていくと、その病院グループが目指している方向性や経営体力、経営安定度などが透けて見えてくる。

例えば利益率が抜きん出て高い場合は、それが前向きな経営努力によってもたらされているものなのか(際立った特長や収益性の高い診療領域や差別化ポイントがあるのか)、或いは職員給与を低く抑えるなどの人件費をはじめとしたコストカットを厳しく行っているという事も場合によっては考えられるし、必要な設備投資を渋っているという事もあるかもしれない。
経営安定度という面からは利益率が良い事は勿論大切な事だが、それが医師をはじめとした職員の幸せと必ずしもイコールになるとは限らない点にも注意が必要である。
また、有名病院を擁する病院グループが意外にも利益率が低かったり、場合によっては赤字のケースもあるという事に驚く人も多いかもしれない。
様々な観点から候補先病院を観察する事は医師の転職という局面でも有益であろう。
まあ、ともかく数字から見えてくる仮説をひとつひとつ検証していく事で病院グループや個々の病院の実際の姿が浮かび上がってくるかもしれない。

では、売上高51位から順番に並べていく。
下記データは東京商工リサーチの調査データに基づき金額は分かりやすいように億円単位に丸めた。
※ [  ]内は2012年の売上高、利益、利益率、主な病院。

51.(医)協和会 [226億円、1.3億円、0.6%、協和会病院(大阪府吹田市)]
52.(社)巨樹の会 [225億円、23億円、10.04%、下関リハビリテーション病院(山口県下関市)]
53.(医)和同会 [222億円、2.6億円、3.91%、片倉病院(山口県宇部市)]
54.(医)社団浅ノ川 [217億円、N/A、N/A、浅ノ川総合病院(石川県金沢市)]
55.(医)社団善仁会 [216億円、24億円、11.12%、横浜第一病院(神奈川県横浜市)]
56.(地独)長野県立病院機構 [214億円、0.7億円、0.32%]
57.公益(社)北海道勤労者医療協会 [201億円、▲1.5億円、▲0.76%、勤医協中央病院(札幌市)]
58.(財)竹田健康財団 [200億円、▲13億円、▲6.44%、竹田綜合病院(福島県会津若松市)]
59.公立陶生病院組合 [199億円、6億円、3.12%、公立陶生病院病院(愛知県瀬戸市)]
60.社会(医)財団 白十字会 [195億円、9億円、4.67%、佐世保中央病院(長崎県佐世保市)]
61.医療生協さいたま(生協) [191億円、▲0.5 億円、▲0.25%、埼玉協同病院(埼玉県川口市)]
62.(医)立川メディカルセンター [188億円、6億円、3.30%]
63.JA山口厚生連 [184億円、2億円、1.16%]
64.社会(医)友愛会 [182億円、2億円、1.26%、豊見城中央病院(沖縄県豊見城市)]
65.(財)厚生会 [182億円、30億円、16.54%、仙台厚生病院(宮城県仙台市)]
66.公益(財)慈愛会 [181億円、▲0.8億円、▲0.45%、今村病院(鹿児島市)]
67.(宗)在日本南プレスビテリアンミッション [179億円、▲17億円、▲9.58%、淀川キリスト教病院(大阪市東淀川区)]
68.社会(医)財団 慈泉会 [178億円、0.4億円、0.20%、相澤病院(長野県松本市)]
69.(医)あかね会 [175億円、14億円、7.71%、土谷総合病院(広島市)]
70.(医)藤井会 [175億円、0.9億円、0.49%、石切生喜病院(大阪府東大阪市)]
71.(社福)三井記念病院 [172億円、▲6億円、▲3.31%]
72.(医)相生会 [170億円、8億円、4.84%、宮田病院(福岡県宮若市)]
73.社会(医)杏嶺会 [170億円、11億円、6.24%、一宮西病院(愛知県一宮市)]
74.(地独)山形県・酒田市病院機構 [170億円、5億円、2.66%]
75.(医)社団苑田会 [167億円、N/A、N/A、苑田第一病院(東京都足立区)]
76.(財)甲南会 [164億円、4億円、2.23%、甲南病院(兵庫県神戸市)]
77.社会(医)母恋 [163億円、4億円、2.40%、日鋼記念病院(北海道室蘭市)]
78.社会(医)天神会 [162億円、16億円、9.78%、新古賀病院(福岡県久留米市)]
79.公益(財)浜松市医療公社 [162億円、0.6億円、0.35%]
80.公益(財)健和会 [160億円、0.4億円、0.28%、みさと健和病院(埼玉県三郷市)]
81.公益(社)京都保健会 [158億円、3億円、1.63%、京都民医連中央病院(京都市中京区)]
82.(地独)山口県立病院機構 [157億円、6億円、3.85%]
83.社会(医)近森会 [156億円、▲14億円、▲9.10%、近森病院(高知市)]
84.(社)藤元メディカルシステム [155億円、3億円、1.71%、藤元総合病院(宮崎県都城市)]
85.社会(医)河北医療財団 [155億円、1億円、0.76%、河北総合病院(東京都杉並区)]
86.(医)社団 松和会 [151億円、10億円、6.89%、池上総合病院(東京都大田区)]
87.公益(財)宮城厚生協会 [148億円、2億円、1.30%]
88.社会(医)大雄会 [148億円、0.6億円、0.37%、総合大雄会病院(愛知県一宮市)]
89.(財)神奈川県警友会 [148億円、2億円、1.35%]
90.社会(医)財団 大和会 [148億円、7億円、4.54%、東大和病院(東京都東大和市)]
91.(医)社団 三喜会 [146億円、3億円、2.02%、鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)]
92.(地独)宮城県立病院機構 [146億円、0.5億円、0.37%]
93.(医)恒昭会 [146億円、6億円、4.36%、藍野病院(大阪府茨木市)]
94.社会(医)敬愛会 [145億円、7億円、4.49%、中頭病院(沖縄県沖縄市)]
95.(医)財団 東京勤労者医療会 [144億円、2億円、1.45%、東葛病院(千葉県流山市)]
96.社会(医)明和会 [141億円、6億円、4.54%、中通総合病院(秋田市)]
97.(財)神戸市地域医療振興財団 [140億円、▲1億円、▲0.68%、西神戸医療センター(兵庫県神戸市)]
98.公益(財)結核予防会 [139億円、9億円、6.63%、複十字病院(東京都清瀬市)]
99.(医)社団 慈誠会 [138億円、6億円、4.40%、上板橋病院(東京都板橋区)]
100.(医)医仁会 [138億円、6億円、4.35%、武田総合病院(京都市伏見区)]

以上が売上順位上位100位までの病院グループである。

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