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心臓病治療に強い病院とは?

心臓病治療に強い病院とは?

前回前々回のコラムではハイブリッド手術室、心臓病の内科的治療(心カテ・PCIなど)と外科的治療(冠動脈バイパス手術、弁置換術など)、更には血管外科分野について簡単に見てきたが、今回は心臓病手術(心臓血管外科)に強い医療機関について少し考察してみたい。

かなりラフな分類である事は承知の上で、心臓手術分野のアウトラインを把握する為に我々医師転職コンシェルジュが考える「心臓病手術に強い医療機関」のひとつの目安としているのが、年間100例以上の心臓病手術実績というものである。この指標で見ると(大都市圏を除くと)、各都道府県でだいたい一桁程度の施設数に集約されてくる。

勿論、心臓手術自体が減少している情勢下(より低浸襲な内科的治療、心カテ等が増えている現状では)、50例前後の心臓手術を行っている施設は、かなり心臓血管外科が充実している施設であると捉えた方が適切なのかもしれない。心臓血管外科の損益分岐としては50例前後が病院経営の観点から見てひとつの目安であろうか(数字的根拠を基に話している訳ではないので間違っていればご教示いただければ幸いである)。

これらに該当するのは、多くがハートセンターや大学病院、大規模公的病院、社会医療法人など民間病院の一部、それに循環器専門の施設などとなっており、多くが大学医局との良好な関係から医師数、設備、症例数とも充実している。

若手の心臓血管外科医にとっては修練の場、或いは将来の幹部候補生としてこれら施設への入職は広く門戸が開かれているケースが多い。
一方、ベテランの心臓血管外科医は、その培ってきたスキルや経験、多方面への人脈などが財産であり、それらを求める医療機関において、相応のポストと待遇を得て、(自らがメスを置く事を決断するまでは)心臓血管外科医として全うしたいという想いの医師が多いのではないだろうか。社会的ニーズ(患者側、病院側)としては、心臓手術が行える施設が限られる中(それらに多くの中堅・若手心臓外科医が集中する現状)、実態としては、ベテランの心臓血管外科医に対するニーズが市中一般病院において強いのは血管外科分野である事は前回も述べた通り。
ただ、その持てる技術や経験を活かし心臓血管外科医としてのやりがいを満たす事が可能な市中一般病院や施設もタイミングやご縁にも依るが、探せばあるもので、全ての条件を満たす案件はなかなか見当たらないかもしれないが、妥協できる点には片目を瞑って、エリアは広めに、あまり焦らずにじっくり探していただくのが吉かもしれない。

次回コラムでは引続き、循環器領域の内科的治療、PCIに強い施設などについて見ていきたい。

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心臓病治療の現状について考察。

心臓病治療の現状について考察。

前回のコラムではハイブリッド手術室について簡単に見てきたが、今日は心臓病の現状を少し見ておこうと思う。

超高齢化社会が到来している我が国においては、生活習慣病が増加しているのは周知の事実であるが、この生活習慣病が悪化した結果として発症するケースが多い病気のひとつが心臓病である。

心臓病は大きく3つに大別される。1つ目は虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、2つ目が心臓弁膜症、3つ目が大動脈の病気(大動脈瘤、大動脈解離など)である。
(他にも拡張型心筋症など専門的には様々な心臓病と呼ばれる病気が存在するが・・・。)

これら心臓病の治療の選択肢として、内科的治療と外科的治療があるが、病気の種類や患者の状態、合併症の有無に加え、施設の方針や心臓血管外科、循環器内科の体制によって治療法が選択されているのが実態のようである。
最近では内科的治療、即ち心カテ治療(PCI=経皮的冠動脈形成術)が増加しており、心臓血管外科を標榜している病院・施設でも実際には心臓血管外科手術を行える体制が整っておらず、実態は循環器内科のみという施設が多く、心臓手術の症例は特定の施設に集中する傾向が強まっている。

心臓血管外科手術が行える施設では、外科的治療、例えば、冠動脈バイパス手術などが行われている。詰まった血管の迂回路(バイパス)を患者自身の体内から採取した血管(グラフト)を使って作り、血流を確保する手術である。
いくつもの血管が詰まっている、或いは他の心臓病を合併しているような場合には外科手術(開心術、開胸手術)が選択される事が多いようである。

他方で、外科手術が第一選択となるのは、弁膜症であり、弁置換術や弁形成術が代表的である。しかしこの弁膜症の治療でも内科的治療と言えるTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)が保険適用となった事から今後はこの治療法が増加してくるのかもしれない。
TAVIのメリットは、手術が困難だった患者でも治療を受けられる可能性が開けた事である。

また、心臓病ではないが、血管外科の範疇で心臓血管外科医の守備範囲と言える末梢血管疾患の治療においては心臓血管外科医が活躍するフィールドが多く存在している(それを生粋の心臓血管外科医が望むか否かは別として、社会的ニーズは存在している)。
第二の心臓とも言われる足の動脈、静脈が詰まる病気は動脈硬化を抱えている高齢の患者を中心に多く見られ、その治療ニーズから心臓血管外科医を求める市中の病院は多い。

次回コラムでも引続き、循環器領域、心臓病手術に関するトピックなどについて見ていきたい。

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ハイブリッド手術室? 心臓血管外科・循環器内科領域の医師求人情報をお探しの方と共通言語でお話ができるように・・・。

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ハイブリッド手術室について、私自身の理解を深める意味でも少し見ておこうと思う。
心臓血管外科医や循環器内科医にとっては常識かもしれないが、ハイブリッド手術室とは、X線透視装置が設置された手術室の事である。つまり外科手術とカテーテル治療を行う事が出来る手術室の事をこう呼んでいる。
X線透視装置と手術室が組み合わさったという意味でhybrid(融合、雑種などの意)なのである。
手術と同時並行で、X線透視ができるので、カテーテルを使った血管内治療や血管内から心臓へアプローチする大動脈弁置換術などでは必要不可欠な手術室とされている。

循環器領域では近年、患者にとって、より低侵襲な治療、即ち、カテーテルによる血管内治療を治療法として選択するケースが増えている。主に循環器内科医が心カテ室でPCIなど心カテ治療を行うが、患者の状況によっては治療中に緊急手術(開心術、開胸手術)に移行せざるを得ない事態も想定される。
そういったケースで、感染症リスクを避ける為、空気清浄レベルのより高い手術室に患者を移して外科手術を始めるといった従来型のやり方から一歩進んだのが、このハイブリッド手術室における治療という事のようである。
ハイブリッド手術室の仕組みは従来型の手術室に高精度のX線透視装置を据え付けたもので、外科手術や血管内治療とX線撮影を同時並行で実施する事ができるのが特徴である。
手術台も全方位から患者のX線透視が可能となる万能手術台となっており、撮影画像は3D処理された立体画像としてモニターで確認する事ができる。

ハイブリッド手術室の普及により経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)も増加しており、(TAVIを行うにはハイブリッド手術室があり、冠動脈のカテーテル治療を年間100例以上実施している施設でハートチームとして治療に当たる事などが条件として義務付けられている。)
こういった流れからも、循環器内科医と心臓血管外科医がタッグを組むハートセンターやハートチームの体制が整った病院や循環器専門病院(クリニック)などの施設に心臓病の症例が集中する傾向が今後益々進むものと思われる。

次回コラムにて、もう少し循環器領域、心臓病などについて見ていきたい。

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