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日本は、そして医師は本当に豊かなのか?(その2)

日本は、そして医師は本当に豊かなのか?(その2)

前回コラムの話題を続けたい。
日本は今後若い労働力人口(支える側)が減少していき、逆に年金や医療、福祉を必要とする高齢者人口(支えられる側)はどんどん増加していく。高齢になれば必然的に病院に掛かる人が増えるので医師の方々も益々忙しくなって大変だ。国の経済力を示す指標のひとつとしてよく引き合いに出されるGDP。日本は2009年に中国に抜かれるまで米国に次いでGDP世界第二位の経済大国と自認してきた訳だが、あっという間に中国に抜き去られて以降、その差は毎年大きくなるばかりである。
ついこの間まで世界第二位の経済大国だと思っていたのがもう7年も前の昔話になっている事に少々驚いてしまった訳だが、今日はGDPをその国の人口で割った「一人当たりGDP」について少し考えてみたい。

国民一人当たりのGDPは?日本は豊かなのか?

人口が日本の10倍以上もある中国と全体のGDPを単純比較してもあまり意味が無いというのは負け惜しみかも知れないが、やはり国民ひとりひとりの豊かさという観点から言えば、「一人当たりGDP」の方がしっくりくる指標だと思う。
さて、この「一人当たりGDP」。IMFや世界銀行、国連など様々な国際機関が統計を出しているがIMFが公表した2015年の順位を見てみると以下のようになっている。

1位 ルクセンブルク USD101,994
2位 スイス USD80,675
3位 カタール USD76,576
4位 ノルウェー USD74,822
5位 マカオ USD69,309
6位 アメリカ USD55,805
7位 シンガポール USD52,888
8位 デンマーク USD52,114
9位 アイルランド USD51,351
10位 オーストラリア USD50,962
11位 アイスランド USD50,855
12位 スウェーデン USD49,866
13位 サンマリノ USD49,847
14位 イギリス USD43,771
15位 オーストリア USD43,603
16位 オランダ USD43,603
17位 カナダ USD43,332
18位 香港 USD42,390
19位 フィンランド USD41,974
20位 ドイツ USD40,997
21位 ベルギー USD40,107
22位 フランス USD37,675
23位 ニュージーランド USD37,045
24位 UAE(アラブ首長国連邦)USD36,060
25位 イスラエル USD35,343
26位 日本 USD32,486
27位 イタリア USD29,867
28位 クウェート USD29,363
29位 プエルトリコ USD29,236
30位 ブルネイ USD28,237
31位 韓国 USD27,195
32位 スペイン USD25,865
33位 バハマ USD23,903
34位 バーレーン USD23,510
35位 マルタ USD22,829
36位 キプロス USD22,587
37位 台湾 USD22,288
38位 サウジアラビア USD20,813
(中略)
75位 中国 USD7,990
※IMFが公表する順位ではマカオ、香港、台湾、プエルトリコなどは国ではなく地域という扱いで順位から除外されている為、上記順位とはやや異なる。

さて、どうだろうか。日本は26位にようやく顔を出している。
私の実感としてはこの順位は妥当な気がする。日本より上位にランキングされている全ての国・地域に行った経験がある訳ではないが、旅行や出張などの短期間とはいえ、それらの国の幾つかに滞在した際に垣間見た限りであるが日本よりもずっと豊かだと感じさせる国はいくつもあった。
逆に日本よりも下位にランキングされている国、例えばイタリアやスペインといった南欧(ラテン)の国、そして韓国や台湾など東アジアの国の一人当たりGDPを見ると妙に納得感がある数字に落ち着いている。実感に近いのである。

全体のGDPが大きくなれば一人当たりGDPも大きくなるが、人口減少トレンドに入って今後稼ぎ手が少なくなる日本がGDPを増やそうと思うと、一人当たりの付加価値を今よりもずっと大きくする必要がある。
しかし、ただ闇雲に働いても限界があるし、無理が祟ってみんな疲弊してしまうだろう。ではどうすれば良いのかと言われれば私にも分からないし、日本の舵取りをしている人たちの意見も様々だろう。しかし規模の拡大や数字上の(ハリボテの)豊かさをひたすら追い求めるのはいつか来た道で周辺国との摩擦を生む事になるだろう。

先週、「世界一貧しい大統領」と言われるウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏が来日した。
環境問題を各国が話し合うリオ会議(Rio+20)で「ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星は一体どうなるでしょうか?」など、「過剰な消費生活に警鐘を鳴らし、それよりもむしろ、より良く生きる事を重視すべき」という大演説で一躍有名になった人物である。

南米ウルグアイの一人当たりGDPの順位は45位(USD15,748)であるが、この「環境資源に恵まれている小さな国」の代表者曰く、「ウルグアイには300万人ほどの国民しかいません。しかし、世界で最も美味しい1,300万頭の牛が私の国にはいます。羊も800万から1,000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さな国にも関わらず国土の90%が資源に恵まれています。」

更に、「私の同志である労働者たちは8時間労働を求めて戦いました。そして今では6時間労働を勝ち取った者もいます。しかしながら6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。何故か?バイク、車などのローンを支払わないといけないからです。毎月2倍働き、ローンを払い終わって気付いた時には私のような老人になっているのです。」

長くなるので興味のある方はWebなどで詳細を検索して欲しいが、医師の方々も知らず知らずのうちにこのような人生になっている人も多いのではないだろうか。エリートと言われる人々に見られやすい傾向であり、日本全体がこのようなジレンマに陥っているのかもしれない。

日本と一人当たりGDPが同じくらいのイタリアや、やや下のスペインといったラテン系の国々は経済状況が厳しいと言われているが結構気楽(?)に構えてその日その日を楽しく過ごしているような印象を受ける。生来、きまじめな我々日本人も、そんな彼らの長所(?)を見習って少し肩の力を抜いて、あまり心配し過ぎず不安に駆られずに生きた方が良いのかもしれない。
しっかりと準備をして、やるべき事をやって、「足るを知る」の精神でいれば「何とかなるさ」くらいの気持ちでちょうど良いのかも、そんな風に感じたムヒカ氏の来日であった。
幸い、日本には智慧も人財も社会資本もまだまだ豊富なのだから。
医師の転職の際にもあまり心配し過ぎずに、起こるか起こらないか分からない将来の事に無闇に不安を感じるよりもまずは一歩を踏み出し行動する事がその不安を取り除く最も効果的な方法のような気がする。

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4月から値上げラッシュ。日本は、そして医師は本当に豊かなのか?

4月から値上げラッシュ。日本は、そして医師は本当に豊かなのか?

前回のコラムでは2040年頃には医師が34,000人も余剰になるという見通しを厚生労働省が発表したという話題を取り上げた。そして既に日本は人口減少時代に突入しており、これまでの量的拡大から質的向上を目指すべきという私の個人的見解を述べた。

今日はその日本の質的向上について身近な話題から考えてみたい。
たまに行くカフェに4月になって初めて行った時の事。その店は数種類のモーニングメニューがあり朝から人気の店なのだが、私がいつもオーダーするメニューをウェイトレスさんが覚えてくれていて「いつもの?」、「はい。」で普段は注文が完了するのだが、その日は「4月から値上げなんです。」と申し訳なさそうな表情で仰る。
これまで380円だったモーニングが420円になると言う(1割超の値上げ)。それだけではない。値上げになる上、これまで付いていた小さなサラダが付かなくなると言う。
何となく釈然としないものを感じながらも、まあ、いいかと、その日はそのままオーダーしたが、次回以降の為にメニュー内容を改めて確認したいと思いメニューを貰った。
たった40円の事と思われるかもしれないが、率にすると1割を超える値上げである。

しかも1年前の今頃にも一度値上げがあり、僅か1年の間に2回も値上げがあったのである。
前回はメニューの内容は変わらず値段だけが350円から380円に上がった(率にして約9%の値上げ)。
去年の今頃は消費税が5%から8%に上がったタイミングだった事もあり、まあ仕方がないかと納得したが、今回は内容を改悪する(サラダが付かなくなった)上に1割を超える値上げである。理由は敢えて聞かなかったが、恐らく様々な原材料コストが4月から値上げとなっている事を受けて止む無く値上げをするという事だと推測している。

元々このカフェに時々だが行くようになったのは、場所が良い事と350円にしてはその内容が充実しているというか、コストパフォーマンスが高くお得感があると最初に感じたからなのだが、このカフェは今時珍しく全席喫煙OKで愛煙家の人たちが常連客となって集まっている店なのである。空気清浄機は備えてあるものの、客の大半が喫煙者の為、煙草を喫わない私にとってはその点においてはお世辞にも快適に過ごせる場所とは言えず、最早この店に通う理由は無くなってしまったと今回のメニュー改悪と1割を超える値上げのWパンチを受け、考えさせられた次第である。

何もこの店の営業姿勢を批判しているのではなく、そういう経済環境の中に一般庶民の暮らしやお店も既に放り込まれており、様々なコストアップ要因から仕方なく値上げや中身を少なくする(実質値上げ)などの企業努力をせざるを得なくなっているという事を実感する出来事だったのである。トイレットペーパーも紙幅をギリギリまで狭くして原材料の値上げ分を売価に転嫁しないで何とか凌いでいると言うがこれとて量が減っているのだがら実質的には値上げである。

前置きが長くなったが、政府はアベノミクスで日本経済は順調に回復しており2020年の東京オリンピックに向けGDP600兆円を目指す方針だと言う。ちなみに2015年の日本のGDPは約500兆円(2015年10月時点のIMFによる推計)で、今よりも2割も拡大するという計画である。
海外から日本を訪れる外国人観光客が激増し、彼らが日本で爆買いをしてくれたり、ホテルの稼働率が軒並み上昇したりといったプラス要因もあり、その実現可能性については何とも言えないが、我々日本で暮らす者としては、出張時にホテルが取りにくくなり、宿泊料金もホテル側が強気の値段設定に転じて高騰しているなど、マイナスの影響の方が多いような気がする。
日本のGDPが拡大しても個々人の所得(特に可処分所得)が増えないと意味が無いのである。

医療機関にとっての消費税のアップは経営を圧迫

国の財政状況が厳しい為、政府は消費税を10%に引き上げる事を決定している。その実施時期については流動的だが、個人にとっては出ていくお金が増える事は既に決定事項なのである。
医師の方に直接的に関係が深いものとしては病院経営にとっての消費税である。医療機関の経営は消費税増税の影響を受けやすい側面がある。なぜなら医療機関にとっての売上である診療報酬は非課税の為、患者さんや保険者に消費税のアップ分を請求する事は出来ない。他方、支出項目である医療材料費などには消費税が掛かる為、消費税が増税されると医療機関の支出は増え、その分、収支が厳しくなり経営姿勢がこれまでよりもシビアになる事が予想されるからである。
※一応、消費税の増税に伴い診療報酬の一部は引き上げられている。

アルバイトの回数を増やす医師が増える?

医師の方も実生活で考えると、年収が増えないと、同じ生活を送っていたとしても消費税増税に伴い家計支出は増え、更に社会保険料負担も徐々にアップするなど可処分所得は確実に減少する。
学会出張の際などにホテル宿泊費が高くなっている事なども実感しておられる医師の方もいると思うが、当直やアルバイトの回数を少し増やして生活防衛をする医師が増えるかもしれない。

私は日々多くの医師の方から色んなお話を伺うが、収入は多いが支出も多いというのが医師の方に見られる一般的な傾向で、今の日本は(特に都市部においては)生きていくのにとてもお金が掛かる構造になっているように感じる。
高い報酬を得ようと思うと遮二無二働くしかなく、ゆっくり働こうと思うと、安い報酬に甘んじるか、或いは医師としての自分の理想像やプライドといった何かを捨てて仕事の内容や拘りは二の次にする必要があったりするのが現実かもしれない。

今回は、少し長くなったので次回に続けたい。

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