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看護基準7対1と10対1の違いが、医療機関や医師に与えるインパクト

看護基準7対1と10対1の違いが、医療機関や医師に与えるインパクト

前回コラムに続いて看護基準7対1と10対1の違いについて見ていきたい。
ご存知の通り2年毎に行われる診療報酬の改定で2016年から看護基準7対1の認定基準が厳しくなった。
一般的に7対1を掲げる医療機関の多くは急性期病院で、いわゆるブランド病院の多くはここに含まれ、バリバリ働きたい、オペをやりたい、症例経験を積みたい、専門医資格を取りたい(維持したい)、スキルアップしたいといった医師たち、特に若手・中堅クラスの医師を中心にこれら急性期病院は勤務先・転職先として人気が高い。
特に都市部に立地する急性期の人気病院は医師の需要と供給の関係(需給バランス)から給料・年収条件はさほど良い訳ではないが医師の働くモチベーションとしてはお金に勝るものがあるという事なのだろう。

7対1施設(病床数)の乱立による看護師不足・保険財源の不足

この7対1の看護配置であるが、かなりざっくり言うと、「重症度が高い患者の入院比率が高く、より多くの看護師(患者7人に対して看護師1名)を配置する必要がある分、診療報酬(入院基本料)を高くしてあげますよ」という事なのだが、高い入院基本料(一人当たりの入院単価)を目当てに、どこもかしこも7対1の算定を目指して看護師争奪戦が繰り広げられ、結果として全国的な看護師不足を招いたのは医師の皆さんも良く知るところである。

そして、国や厚労省の想定を遥かに超える多数の7対1施設(病床数)が乱立して医療費が膨れ上がり保険財源の不足に拍車が掛かっているのが目下の状況である。

2015年10月時点の数字になるが7対1を算定している施設数は1,541病院、病床数は約36万7千床。国や厚労省の当初の目算では4万床ほどを見込んでいたというから何と想定の9倍もの7対1急性期病床が存在しているという事のようだ。
急性期医療にはお金が掛かるので7対1病床を減らすよう政策誘導する目的が今回の7対1認定厳格化の背景にあるという。

7対1と10対1の入院基本料(収入)の差による減収と、病院の収支の最適化

7対1と10対1の入院基本料(収入)の差は1ベッドあたり約3,000円/日。
仮に300床の病院が80%の病床稼働率の場合で試算してみると、1日あたり72万円の減収、年間2億6,300万円ほどの減収となる。かなりインパクトは大きい。

診療報酬制度はやや複雑で病院経営には様々な要素が絡み合う為、そう単純なものでは無いとは思うが、シンプルに考えれば「収入と支出のバランスをいかに最適化するか」という点にfocusできる。そして病院毎に自ずと取るべき戦略は見えてくるように思う。
収支を最適化し(僅かでも良いから組織存続の再投資が可能な)利益を計上し、組織として永続化していく事は勿論であるが、医師をはじめとした医療スタッフに充分な給料を支給し、良い医師(やスタッフ)が集まれば、良い医療の提供が可能となり、医療を必要とする患者が集まり、高い病床稼働率を維持し、高い診療報酬点数を得られ、盤石な経営基盤が出来上がる・・・。
これは病院経営的には理想だろうが、しかし医療は営利を追求するものではないという高邁な理想の下、利益度外視で医療を提供する事は最早許されない経済状況であり、他方で、予防が行き渡り患者がみんな健康になれば素晴らしいという考えを推進すれば経営が成り立たない病院が続出するだろう。

今の日本は微妙なバランスの上に均衡が保たれており、考え始めると禅問答のようになってしまう。世の中は常に矛盾と不条理を包含しているもので必ずしもセオリーや理想通りには進まないのが難しいところ。

賢い病院経営者や事務方責任者はまずは医師にはやりたい医療を(もちろん患者の為になる事が大前提だが)好きなやり方でやってもらうよう配慮している。
その上で収支を最適化する方法を考えるという好循環の環境を作り上げている医療機関では医師の勤務に対する満足度が高く定着率も高いように感じる。

10対1移行による看護師の人件費減少

話を看護基準に戻そう。
10対1に移行すれば、売り上げが減る代わりに、看護師の必要数も少なくなり(7対1→10対1)、人件費も減少する。
いわば身の丈にあったdownsizingで適正な経営を目指すのもひとつであろう。
簡単に人を減らせないという悩みはあるものの看護師を欲しいという施設は多数あり、医療機関各々の事情や地域における役割などから自然と適正なものに収斂していくのだろうと期待したい。

特に200床~300床規模くらいの中・小規模施設、急性期病院として生き残れるかどうか微妙な病院に勤務中の医師の方々や、それらに転職を考えている医師の方々は勤務条件のみならず看護基準の動向なども含め病院の経営指標や経営方針もwatchしておかれると良いかもしれない。

医師転職コンシェルジュでは、転職をお考えの医師の考え方と、病院の看護基準の動向なども含めた「病院の経営指標」や「経営方針」を考慮し、ご希望の条件に合った病院をご紹介いたします。
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看護基準7対1を維持する? 医療機関の選択

看護基準7対1を維持する? 医療機関の選択

過日、とある地方都市の中規模病院を訪問した際に事務局長から標題の話題が出たので少し取り上げてみたい。
この地方都市は大学病院や全国的に著名な病院に加え、様々な規模や医療機能を持った特徴的な医療施設が充実しており、街の雰囲気も良く、子息の教育環境も申しぶん無いなど、転職を考える医師には人気のエリアとなっている。

そんなエリアに立地するベッド数300床未満の民間病院での話題で、この医療法人の事務局長さんとはかれこれ10年近いお付き合いになるのだが、今とても忙しいと言う。
以前は医師の採用、確保に大変ご多忙だったのが、現在は看護師の確保の為に、看護学校回りや経営全般の諸般の事務仕事でとにかく忙しい中、急な連絡にも関わらずお時間を取っていただいた。

この病院は元々、脳神経外科や神経内科の診療からスタートした病院で、そこから派生してリハビリテーションや整形外科、循環器、呼吸器、消化器など各科(内科系、外科系)、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、形成外科、婦人科など診療領域を拡げ、総合病院化していった医療機関である。

看護基準7対1を満たすのに四苦八苦する病院

この病院の看護配置は7対1である。
しかし、前回2014年の診療報酬改定と今年2016年の改定で7対1入院基本料等の施設基準の見直しが行われ、中小病院(医療機関)にとっては7対1を維持する事がなかなかに困難な状況となっている。
無菌治療室での治療が評価項目に加わったり、救急搬送などを多く受け入れているかどうかや手術などの医学的状況も加味されるようになり、より患者の重症度や医療・看護の必要度が評価基準となり、ちょっと背伸びをして7対1を取ったものの看護師さんの離職などで7対1を維持するのに四苦八苦という病院も少なくないようである。

看護基準7対1を満たせなくなった病院の選択

7対1の施設基準を満たせなくなると、10対1などに届け出を変更するか、病床数を削減するか、一部病棟を地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟に転換するなどの方策が考えられるが、7対1を返上して10対1入院基本料に戻る病院も見られる。
名実ともに急性期の病院として地域で存在感を保ちながら生き残る事は簡単ではなくなってきているのである。

今回訪問した病院の選択は・・・

今回訪問したこのエリアでもそのような動き(10対1への転換など)が見られる中、この病院は7対1を維持し、更に病院規模の拡大と積極的な最新医療機器導入など順調に発展を続けておられる様子であった。

看護師の確保に忙しいとはいうものの、医師の採用は最重要事項のひとつという事で引き続き医師求人募集を行っておられ、良い先生であればいつでもご紹介くださいと笑顔で仰っておられたのが印象的であった。

医師転職コンシェルジュでは、このような病院の考え方と医師の考え方を、十分にヒアリングし、ご登録いただいた医師にピッタリの転職先を紹介しているので、ご相談だけでもどうぞ。

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次回コラムでは7対1と10対1の違いが病院経営にどのくらいのインパクトを与えるのか少し見ていきたいと思う。

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